研究実績の概要 |
本研究では、初心者がハーモニーの響きを手掛かりに楽曲生成ができる簡便なインタフェース作成への基礎検討を行う。従来の深層学習による生成手法では、リハーモナイズされたデータが少ないこともあり、データから生成された結果が潜在空間内の周囲の学習データで補完されて、時間方向の接続が考慮されていなかったり、メロディに合わない不協和音が生成されたりするという問題があった。そこで、期間全体ではコード進行の時間方向の接続、メロディの制約、和音の同時性の面からハーモニー生成モデルの検討に取り組んだ。本年度は、Variational Autoencoder (VAE)とLong Short-Term Memory(LSTM)を用いた生成モデルについて、協和性を考慮せずにコード進行を生成してしまうことから不協和を抑制する改善に注力した。具体的には、不協和音度に基づいて理想的な協和度を定義し、和音構成音から計算される2音の共起ベクトルが理想的な協和度に近づくように、不協和音ペナルティを単純なネットワーク構造として実装した。コード進行のスタイルを変えて生成した11,400曲を分析したところ、本モデルを使用した場合、従来法に比べ三和音や7thコードといった標準的な和音数が増加した。加えて、本モデルを用いることで非標準和音や不協和音の数が減少することも検証できた。このたびの生成結果例は個人ホームページで公開し、フィードバックを仰ぐ体制も整えた。今後は専門家のフィードバックを取り入れながら改善を図るとともに、響きのコントロールに協和度を用いる拡張も考えている。
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