北極海では温暖化により海氷が急速に失われ、海氷の融解が海洋物質循環および海洋生態系に与える影響を理解することが急務となっている。そこで本研究では、海洋の微量栄養物質であるマンガンに着目し、北極圏海氷域におけるマンガンの濃度と分布および、その動態を明らかにした。海氷および海水中のマンガンの定量評価を行うために、マンガンの簡易分析法を確立した。シベリア側の北極海で観測を実施した結果、表層塩分を低下させている淡水源の2~15%は河川水であり、海氷の融解水は5%以下であった。北極海表層のマンガン濃度の変化は、海氷の融解水よりも、むしろ河川水の流入によって引き起こされていることがわかった。
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