研究課題/領域番号 |
20K19950
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
鄭 峻介 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (40710661)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 東シベリア / 永久凍土 / カラマツ / 樹木年輪 / 気候変動 / 異常気象 |
研究実績の概要 |
東シベリアにおける過去の異常気象の観測規模・頻度を明らかにするために、各観測サイトにおいて、過去140年間に観測される異常気象を、それぞれの種類(極端な高温/低温、大雨/干ばつ)・規模(10・30・50・100年に1度)・長さ毎に整理した。 当初予定(申請書段階)では、気象データとして、Climate Research Unit による0.5°月平均グリッドデータを使用予定であったが、本研究課題が基本的にはサイトスケールでの研究であることから、アメリカ海洋大気庁がまとめている日気温・降水量の観測ステーションデータセット(Global Historical Climate Network: GHCN)を使用することとした。また、異常気象はそれぞれの気象変数(気温と降水量)の過去140年間の平均値からの外れ具合(>1~3σ)で検出する予定でいたが、異常気象の規模をより明示的に扱うために、極値理論の一般化極値分布を用いて10・30・50・100年に1度の規模で異常気象を検出した。 過去に観測された異常気象の時系列変化は、異常気象の種類・規模・サイトにより異なっていたが、1980年以降に観測頻度が増加する傾向が全体的に見られた。サイト間で比較すると、タイガ-ツンドラ境界域サイト(チョクルダ)、平地タイガサイト(ヤクーツク)、山地タイガサイト(エレゲイ)の順で観測頻度が高い傾向が明らかとなった。上述した傾向は、特に50年に一度の規模で観測される大雨イベントの時系列変化で顕著であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度夏季に、東シベリアのタイガ林サイト(ヤクーツク; 62N, 129E、エレゲイ; 60N, 133E)、及びタイガ-ツンドラ境界域サイト(チョクルダ; 70N, 149E)において、現地調査を実施予定であったが、COVID-19の影響で中止せざるを得なかった。そこで、次年度(令和3年度)に実施予定であった気象データ解析を前倒しで実施し、一定の成果は挙げることができた。令和3年度に、現地調査が実施できれば、研究実施期間内に計画を達成することは十分に可能であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
異常気象に対する樹木応答・脆弱性を評価するために、東シベリアのタイガ林サイト(ヤクーツク・エレゲイ)、及びタイガーツンドラ境界域サイト(チョクルダ)において、過去100-250年間における樹木成長量変動パターン(樹木年輪生態学的手法)を明らかにするとともに、各サイトにおける微地形起伏・樹木サイズの空間分布特性を明らかにする。そのために、上記サイトでの現地観測を実施する。実施項目は、①年輪コア試料採取、②樹高・胸高直径計測、③比高(微地形起伏)計測、④土壌水分量計測、⑤地温計測、⑥融解深計測の6点である。各サイト内のカラマツをランダムに50本程度選び、年輪試料採取と樹高・胸高直径計測を実施する。また、その周辺における③-⑥の計測を実施する。年輪試料は現生木と枯死木の両者を対象とする。樹木年輪試料は、ロシアでの輸出許可が得られ次第、日本に輸入し、年輪幅計測、年代決定(枯死木については枯死年も明らかとなる)を実施する。 令和2年度に整理した過去140年間の様々な種類(極端な高温/低温、大雨/干ばつ)・規模(10・30・50・100年に1度)・長さの異常気象に対して、対象樹木個体の成長量がどのような変動パターンを示すか?、および各個体のその変動パターンの違いと生育場所の微地形起伏・樹木サイズ特性との関係性を定量的に評価する。比高(微地形起伏)と土壌水分量・地温・融解深との関係性についても定量的に評価し、微地形起伏が異常気象に対する樹木応答に影響を与えるプロセスについても理解を深める。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度夏季に実施予定であった東シベリア現地調査がCOVID-19の影響で中止せざるを得なかった。そのため、調査旅費や、データ解析関連備品経費、さらには成果発表に関連する経費に関して次年度使用額が生じた。令和3年度に、現地調査を予定しており、令和2年度に予定していた旅費・データ解析関連備品経費・成果発表関連経費を使用する予定である。
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