研究課題/領域番号 |
20K19951
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
高橋 純子 筑波大学, 生命環境系, 助教 (30714844)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 選択流 / 根域土壌 / 経根吸収 / 転流 / 森林植物根 / 福島第一原子力発電所事故 |
研究実績の概要 |
福島県の林業復興上、樹木によるCs-137吸収量の将来予測を行うことが求められているが、土壌中の可給態Cs-137と樹木根による吸収量の間には明確な関係が得られていない。その理由の1つとして、これまでの多くの研究では、森林内のCs-137沈着量が空間的に不均一であることや、さらに同一深度内の土壌においても選択流等によって不均一であることは考慮されていないことが挙げられる。そこで、本研究では、染料を用いた人工降雨実験を行い、染色部分と非染色部分の土壌を深度別に採取し、形態別Cs-137の定量を行った。その結果、染色部分の方がCs-137濃度が高く、水溶態や交換態Cs-137の存在割合も大きいことから、根の周囲など選択流が流れ易い部位に可給性の高いCs-137が集積している可能性が示唆された。 本年度は、植物根の方に着目し、深度別に土壌のサンプリングを行い、これを植物根と植物根に付着していた土壌(根域土壌)およびその他の土壌に分別した。それぞれのCs-137濃度を測定したところ、根域土壌と根に接していない大部分の土壌については、0-10 cm深では大きな差は認められなかったものの、それより深い層では根域土壌の方が約10-100倍高いことが確認された。植物根については、20 cm深までは深くなるにつれてCs-137濃度が低下したが、それより深い層では濃度が一定である傾向が認められた。今後は、植物体内での転流の影響を考慮しながら、根域土壌について更に調査を進める予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
森林樹木における根域土壌の採取方法については十分に確立された方法がなく、植物根の洗浄の際に浮いたものを集めるという方法をとった。これは、定性的な方法だが、昨年度の結果である選択流が流れる部位よりもさらに微細な領域である根域土壌の方がCs-137濃度が高い可能性を示すことができた。このように、仮説の通りの成果が得られており、おおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、この選択流の影響範囲や根域土壌中のCs-137蓄積量を定量化する。具体的には、深度ごとに上から定点写真を撮影し、選択流の影響範囲(染色範囲)の3D化を試みる。さらに、深度ごとの樹木根バイオマス量およびCs-137濃度の測定を進め、樹木によるCs-137吸収量(蓄積量)と土壌のとくに選択流の影響範囲や根域土壌中のCs-137濃度との関係を明らかにする。
|