研究実績の概要 |
本研究では、都市や郊外で大気粒子の粒径別捕集やPM2.5の時別の捕集を行い、ニトロ芳香族炭化水素類(NAHCs)と発生源指標物質を測定し、大気粒子中のNAHCsの発生起源、生成・変質メカニズムを評価する。また、発生起源の影響や二次的な変質進行度を示す新規指標として、NAHCs成分濃度比の有効性を評価することを目的とし研究を進めた。 有機エアロゾル自動計測器を都市部である名古屋市内に設置し、PM2.5の時別捕集と時別のOC、ECの連続測定を行った。またNAHCsについて、これまで分析可能であった13種に、3-メチル-4-ニトロカテコールおよび3-メチル-5-ニトロカテコールを加え分離条件を再検討し、一斉分析法を確立した。 名古屋で捕集したPM2.5の時別試料(テープろ紙)を用いて、光化学オキシダントが比較的高濃度であった春と夏の試料について3時間ごとの有機指標成分とニトロ芳香族炭化水素の分析を、GC-MSおよびLC-MS/MSにより行った。データを解析した結果、本研究の重要課題である、ニトロ芳香族炭化水素の新規環境影響指標への展開について、3,5-ジニトロサリチル酸/5-ニトロサリチル酸比を大気中での変質の進行度を示す指標として用いることができる可能性が示めされた。 粒形別試料を用いたNAHCs分析を行ったところ、冬季における、PM2.5/全粒形は、ニトロカテコール類が90%以上、ニトロサリチル酸は70%以上であった。この結果より、二次生成や燃焼起源の粒子が濃縮される微小側に、これらの成分が濃縮されていることが示された。
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