研究実績の概要 |
本研究の目的は,微量金属安定同位体比を用いて海水中粒子態微量金属の起源および溶存態―粒子態変換過程を理解し,現代海洋における微量金属(Fe,Ni,Cu,Zn,Cd,Pb)の供給―輸送―除去過程を解明することである.本年度は以下の研究を実施した. 【海水中溶存態Fe,Ni,Cu,Zn,Cd,Pb同位体比分析法の確立】これまでの研究(18K14250)で開発した海水中溶存態Fe,Ni,Cu,Zn,Cd,Pb同位体比分析法を最適化し,分析にかかるコストおよび時間を大幅に削減した.また,本法の精度と確度を海水の繰り返し分析および添加回収実験によって評価した.得られた精度および確度は,海洋のFe,Ni,Cu,Zn,Cd,Pb同位体比分布を観測するうえで十分であった.来年度は,これまでに開発した海水中粒子態,溶存態微量金属同位体比の分析法を論文にまとめ国際学術誌に投稿する. 【日本海溶存態Fe,Ni,Cu,Zn,Cd,Pb同位体比鉛直分布の解明】海水中微量金属の粒子態―溶存態変換過程(粒子への吸着,粒子の溶解など)を理解するには,溶存態微量金属の同位体比を知る必要がある.日本海日本海盆の測点CR47(138.2°N, 42.7°E)における溶存態Fe,Ni,Cu,Zn,Cd,Pb同位体比の鉛直分布を明らかにした.今後は,これまでに得られた日本海の大気エアロゾルおよび海水中沈降粒子の微量金属の同位体比と比較し,日本海における粒子態微量金属の起源および海水溶存成分との相互作用について明らかにする. 【論文発表】南シナ海における沈降粒子中Zn同位体比に関する論文を国際学術誌Geochimica et Cosmochimica Actaに発表した.東シナ海溶存態Ni, Cu, Zn同位体比に関する論文を国際学術誌Marine Chemistryに投稿した.
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