研究課題
本研究の目的は、1)アイスコアを用いてグリーンランド氷床上における過去の鉱物ダストの時間変動を復元することと、2)氷床周辺地域を起源とする粒子の時間変動が、同地域のどのような環境要因の変動と関係しているかを明らかにすることである。令和4年度は、(1)の目的を達成するために、前年度に引き続きグリーンランドアイスコアの分析や年代決定などを実施した。グリーンランドの北東部に加えて、北西部のアイスコア(NEEM浅層コア)の分析も行った。分析は主に国立極地研究所の連続自動融解分析装置(CFA)を用いて行った。CFAシステムを構成する分析機器を用いて、各種溶存及び不溶成分の高分解能分析を行った。また、コアの融解液の一部をコールターカウンターで分析し、鉱物ダストの詳細な粒径分布を取得した。CFAによって得られた結果の検証を行うために、アイスコアの分析値と浅部の試料から得られたそれの比較も行った。これまでに得られた結果を用いて、鉱物ダストの降下量を求めた結果、先行研究から得られたそれと整合的な結果が得られた。また、過去100年間の大きい粒子の濃度に周期的な変動が見られたことから、グリーンランド沿岸部からの鉱物ダスト供給量が周期的に変動していることが示唆された。(2)の目的を達成するために、大きい粒子の濃度とNAOインデックスの時間変動を比較した結果、両者の変動が整合的であることがわかった。特に、20世紀前半の期間においては、両者の間に有意な相関関係が見られた。これらのことから、グリーンランド周辺の大気循環の変化や、それに伴う気温や地表面環境などの変化が、グリーンランド沿岸部における鉱物ダストの発生量に影響を与えていたことが示唆された。
すべて 2023 2022
すべて 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件)