研究課題/領域番号 |
20K19965
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研究機関 | 特定非営利活動法人喜界島サンゴ礁科学研究所 |
研究代表者 |
岨 康輝 特定非営利活動法人喜界島サンゴ礁科学研究所, 研究部門, 特別研究員 (20747779)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 完新世 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、過去1万年の間に黒潮域の塩分低下がいつ、どの程度変化したのか、の詳細を明らかにするため、年単位より短い時間分解応で過去の塩分変動を復元できるサンゴ骨格とシャコガイ殻に着目し、黒潮域である南西諸島の離水サンゴ礁から採取した異なる時代・緯度の化石サンゴ骨格・シャコガイ殻中の酸素同位対比と炭酸凝集同位体を測定して塩分復元を行うことである。 令和2年度は、既に採取したトカラ列島の宝島と沖縄本島南部で採取したサンゴ骨格(現生・化石)の酸素同位対比測定を主に実施した。試料の化学測定前には試料が化学測定に適しているか、つまり過去の環境を正確に記録しているかどうかを判定するための化石の保存状態を粉末X線回折(XRD)測定、電子顕微鏡観察、軟X線画像解析により、化石(炭酸塩鉱物)中の二次付加鉱物、溶解、変質の有無を確認することで明らかにした。保存状態の良好な試料は、次亜塩素酸ナトリウムによる化学処理を施し、マイクロドリルシステムによって粉末化した後、従来の質量分析計で酸素同位体比測定を行った。トカラ列島の中之島サンゴについては、現生サンゴ骨格中で確認できなかった明瞭な年輪を化石サンゴ骨格中で確認できたため、年輪を用いて骨格成長率の年変動を定量した。また同時に、化石骨格のXRD測定、軟X線画像解析で二次付加鉱物、溶解、変質が明瞭に確認されなかったことから、中之島の化石サンゴが化学計測に適している可能性が高いことを明らかにした。現在、研究対象試料の追加計測を進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究実績の概要の記載通り、令和2年度はトカラ列島の宝島と沖縄本島南部で採取したサンゴ骨格(現生・化石)の酸素同位対比データの信頼性を高めることができ、研究計画の一部は着実に進展した。他方で、本年度は当初予期していなかったコロナ禍となり、令和2年度の研究目的である中之島サンゴ試料の粉末化や化石シャコガイの年代測定が計測機器の利用時間を十分に確保出来なかったことと、野外調査が全面的に中止になったため、遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画全体を確実に遂行するため、令和2年度の研究計画を引き続き実施する。特に、本年実施した現生・化石サンゴ骨格の酸素同位体比計測をさらに進め、論文としての発表を目指す。それを踏まえた上で、申請時の令和3年度計画に則り研究を進める。 他方で、コロナ禍が長引くことで令和2年度と同様に研究活動が進展しない可能性があるため、現有する現生サンゴ骨格の炭酸凝集同位体比データの取得を開始することで、復元塩分の高精度化を目指す研究も進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は当初予期していなかったコロナ禍となり、令和2年度の研究目的である中之島サンゴ試料の粉末化や化石シャコガイの年代測定が計測機器の利用時間を十分に確保出来なかったことと、野外調査が全面的に中止になったため、次年度使用額が生じた。研究計画全体を確実に遂行するため、令和2年度の研究計画を引き続き実施する。それを踏まえた上で、申請時の令和3年度計画に則り研究を進める。他方で、コロナ禍が長引くことで令和2年度と同様に研究活動が進展しない可能性があるため、現有する現生サンゴ骨格の炭酸凝集同位体比データの取得を開始することで、復元塩分の高精度化を目指す研究も進める予定である。
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