研究実績の概要 |
本研究の目的は、過去1万年の間に黒潮域の塩分低下がいつ、どの程度変化したのか、の詳細を明らかにするため、年単位より短い時間分解応で過去の塩分変動を復元できるサンゴ骨格とシャコガイ殻に着目し、黒潮域である南西諸島の離水サンゴ礁から採取した異なる時代・緯度の化石サンゴ骨格・シャコガイ殻中の酸素同位対比と炭酸凝集同位体を測定して塩分復元を行うことである。令和3年度は、令和2年度に化学計測に適していると判定したトカラ列島の宝島と沖縄本島南部サンゴ骨格(現生・化石)の酸素同位対比測定を実施した。具体的には、化石と各離水サンゴ礁周辺海域から採取した現生サンゴ骨格の酸素同位体比を1~2ヶ月の時間分解能で計測した。計測した化石サンゴと現世サンゴの夏期と冬期の酸素同位体比を平均したところ、現生サンゴより化石サンゴで+0.41~0.55‰高いことがわかった。また、新型のレーザー分光装置用いた炭酸カルシウム中の存在量が極微量の二酸化炭素分子(13C16O18O, 質量47、炭酸凝集同位体、Δ47)と海水温のキャリブレーションを行うための前段階として、石垣島白保で採取した現生サンゴ骨格の酸素同位体比の計測を1ヶ月の時間分解能で約4年分行い、明瞭な年周期を検出した。加えて、2021年11月に石垣島名蔵にて野外調査を実施し、化石サンゴマイクロアトールの試料を採取すると同時に、化石のシャコガイ殻の採取に成功した。当該研究の途中成果については2021年度日本サンゴ礁学会第24回大会で発表するとともに、研究に関連した解説書を喜界島サンゴ礁科学研究所特集号に投稿した。
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