研究実績の概要 |
チロシル-DNAホスホジエステラーゼ(TDP)は、TDP1とTDP2の2種類存在している。TDP1は、DNA3'末端にトラップされたトポイソメラーゼ1を除去する活性を有する。一方、TDP2は、DNA5'末端にトラップされたトポイソメラーゼ2を除去する活性を有することが分かっていた。研究代表者は、TDP1遺伝子欠損細胞において、TDP2はDNA3'末端に結合したトポイソメラーゼ1を除去する活性があることを発見した(Tsuda M et al, DNA Repair, 2020)。ヌクレオシドアナログは、DNA合成酵素によりDNAに取込まれ、それ以降のDNA伸長を停止させる。TDP1は、3'末端に取り込まれたヌクレオシドアナログを取り除くことが知られていた。研究代表者は、TDP2がバックアップとして3'末端に取り込まれたこれらのヌクレオシドアナログを除去することも明らかにした(Tsuda M et al, DNA Repair, 2020)。このように、細胞内において、TDP1およびTDP2は、様々なDNA損傷の除去を行なっていることが明らかになったが、DNA二本鎖切断(DSB)の修復に関与するか不明であった。そこで、研究代表者は、TDP1・TDP2遺伝子を破壊したヒトTK6細胞を用いて、放射線および放射線類似作用物質(ブレオマイシン・カリケアミシン)に対する感受性を調べた。その結果、TDP1/TDP2二重遺伝子欠損細胞は放射線に対してほとんど感受性を示さないことが分かった(Tsuda M et al, J Radiat Res, 2021)。一方、放射線類似作用物質に対しては非常に高い感受性を示すことが分かった。これらの結果は、放射線誘発DNA二本鎖切断とは異なり、放射線類似作用物質誘発DNA二本鎖切断は、TDP1やTDP2が共同する新規な経路により修復されることを示唆する。
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