研究課題/領域番号 |
20K19983
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
田上 瑠美 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 助教 (60767226)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 水圏環境 / 化学物質 / 網羅分析 / サスペクトスクリーニング / ノンターゲット分析 / 水生生物 / 生物濃縮係数 |
研究実績の概要 |
本研究では、国内およびアジア途上国の水圏環境を対象に、高感度分析が可能な液体クロマトグラフ-四重極型質量分析装置(LC-MS/MS, Sciex QTRAP 5500)と高分解能分析が可能な液体クロマトグラフ-四重極飛行時間型質量分析装置(LC-QToF-MS/MS, Sciex X500R)を用いたターゲット分析・サスペクトスクリーニング分析・ノンターゲット分析を試み、アジア途上国の表層水と水生生物に残留する人工汚染物質を網羅的に解析する。 初年度は、水質汚染が進行しているインド、インドネシア、タイ、ベトナムの水圏環境に残留する化学物質を対象にターゲット一斉分析とサスペクトスクリーニング分析を試みた。ターゲット一斉分析では、医薬品類73種、パーソナルケア製品由来物質11種、ビスフェノール類5種、人工甘味料3種、計92種を定性・定量した。サスペクトスクリーニング分析では、医薬品類、違法薬物類、農薬類、工業由来物質など約1500種を対象に分子量関連イオンピークのモノアイソトピック質量、同位体イオン強度比、Mass defect、不飽和度、MS/MSスペクトルの測定データを基に定性を試みた。 インドとベトナムの都市河川およびタイの市内運河の化学物質による汚染が顕在化した。またベトナムのプラスチックリサイクル施設からの排水が流入する河川から、ビスフェノールAが顕著に高い濃度(52000 ng/L)で検出され、魚類への繁殖阻害影響(二世代目の孵化成功率, LOEC: 160000 ng/L)が示唆された。 本研究の成果により優先的に詳細調査すべき環境汚染物質が明らかになりつつある。監視が必要な河川域の情報提供も可能となり、効果的かつ効率的な化学物質管理対策が期待できる。次年度は水生生物の網羅分析により高い生物濃縮性を示す新規汚染物質の探索を試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度は7月末まで産前産後休休暇を取得していたこと、また復職後もコロナ感染対策として勤務時間の削減が推奨されたことから、実験、測定、データ解析が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
産休中であった4ヶ月分について研究期間の延長を申請予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は4月から7月まで産前産後休暇中であったことに加えコロナの影響により研究が遅れているため、物品費の支出が予定より少なくなった。また試料採取のためアジア途上国への渡航を予定していたが、コロナの影響により見送ったため、旅費は発生しなかった。残額は次年度に繰り越し、必要に応じて使用する予定である。また研究期間の延長(産前産後休暇を取得していた4ヶ月分)を申請予定である。
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