研究課題
最終年度は、愛媛大学の生物環境試料バンク (es-BANK) に冷凍保存されている魚食性鳥類の筋肉および肝臓試料を活用して、生物蓄積 (濃縮) 性を示す有機ハロゲン化合物 (OHCs) のノンターゲットスクリーニング分析を遂行した。加えて、昨年度実施したスクリーニング分析において、海水、堆積物、二枚貝、そして魚類から検出されたOHCsを対象に、鳥類に対する移行残留性や生物濃縮性の解析・評価をおこなった。その結果、残留性有機汚染物質 (POPs) に指定されているポリ塩化ビフェニル (PCBs) と有機塩素系農薬類 (OCPs) の高濃度蓄積が鳥類の筋肉および肝臓で認められ、海洋生態系の高次捕食者に対するPOPs汚染は今なお継続していることが明らかとなった。OCPsのなかでも、ジクロロジフェニルトリクロロエタン (DDT) およびクロルデン (CHL) 類については既存物質のみならず、製剤の不純物や環境・生体内変化体と考えられる多数の未同定物質 (DDT・CHL類縁物質) が両組織に蓄積していた。これらのDDT・CHL類縁物質は、鳥類だけでなく昨年度分析した魚類からも検出が確認されたため、食物連鎖を介した生物濃縮の可能性が考えられた。以上の研究結果から、海洋環境中には依然として未同定のPOPs様物質が残留しており、これらの汚染は生態系の低次~高次栄養段階生物種にまで及んでいることが示唆された。そのため、法的な監視・規制対象外の物質群を網羅的に検出できる新規スクリーニング分析手法の開発および多様な野生生物種への適用研究が今後求められる。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
Environmental Science & Technology
巻: 55 ページ: 8691~8699
10.1021/acs.est.1c00357