研究課題/領域番号 |
20K19985
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
王 斉 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 特任助教 (60811685)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 多環芳香族炭化水素類(PAHs) / ハロゲン化多環芳香族炭化水素類 / PAHsの水酸化誘導体 / 有害性評価 |
研究実績の概要 |
高リスク環境汚染物質である多環芳香族炭化水素類(PAHs)と塩素化PAHs(ClPAHs)は、様々な環境試料から広く検出されたが、環境挙動や毒性等のごく一部しか解明されていない。PAHsは生体内で代謝され水酸化PAHsなどに変換して毒性を示すこと、およびClPAHsの化学構造と類似しているポリ塩化ビフェニル(PCBs)は、生物代謝により一部が水酸化PCBsとなることが知られている。ClPAHsも同様に生体内で代謝され、水酸化ClPAHs(OH-ClPAHs)となる可能性が考えられる。しかし、標準物質と分析方法の欠如により、OH-ClPAHsに関する研究が展開されていない。本研究では、OH-ClPAHsの標準物質を合成し、分析方法を開発する。その上でOH-PAHsとOH-ClPAHsに着目し、その前駆物質であるPAHsとClPAHs等を含め、有害性と環境挙動を調査する。 今年度は、環境中に多く存在する1-chloropyrene(1-ClPyr)について、その代謝物として考えられる3種類の水酸化ClPyr(OH-ClPyr)の標準物質を合成した。また、pyrene(Pyr)、OH-Pyr、1-ClPyr、および新規合成した3種類のOH-ClPyrsを用いたin vitro試験により、ヒト芳香族炭化水素受容体(hAhR)活性評価を行った。その結果、全ての試験物質の活性が確認できており、OH-ClPyrsの中に、OHPyrやClPyrよりも活性を上昇させる異性体が存在した。さらに、合計72種類のPAHs・ハロゲン化PAHsに対して分析法を開発・改良した上で、日本およびバングラデシュの大気中におけるこれらの汚染物質の発生源推定と発がんリスク評価を行い、バングラデシュの大気環境において高い発がんリスクを有していることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一部のClPAHsの潜在的な代謝物であるOH-ClPAHsの標準物質を合成したこと、また、PAHs、ClPAHs、OH-PAHsおよびOH-ClPAHsについて毒性評価を行ったこと、さらに、環境中におけるPAHs・ハロゲン化PAHsの濃度を実測し、発生源推定と有害性評価を行ったことから、当初の予定通りである。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、OH-PAHs・OH-ClPAHsの標準物質を合成しながら、PAHs・ClPAHs・OH-PAHs・OH-ClPAHsに対して包括的な毒性評価を行う。また、OH-PAHs・OH-ClPAHsの分析方法を最適化して環境中における汚染実態調査を行う。なお、ヒトの日常生活におけるPAHs・ClPAHsについてより詳細な曝露実態を把握し、リスク評価を行う。
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