最終年度は、前年度のLED照射培養における問題点の改善を重点的に行なった。培養装置内の温度上昇とLED照射範囲のおける照度のムラの改善である。照射ムラの改善にあたり、砲弾型LEDからテープLEDへの変更を行った。砲弾型LEDと比べて照射角が大きく、広い面積を照射することが可能であり、照度ムラも少ない。一方で照射パワーが低いことや、単波長LEDを実装されているものが少なく、検出される波長は幅が広い、または複数のピークを持っていることが多い。単波長による光の影響を検証するため、購入したLEDのスペクトルを測定し、単一ピークが検出でき、最もピーク幅が狭いLEDを選択した。続いて、照射角からテープLEDの培養庫内での配置を検討し、照射パワーメーターによって数十点の位置で測定し、照射分布を検証し、照射ムラの発生を抑えた。可視光のLEDは電気から光への変換効率が高く、LEDの発熱はランプ光源などに比べて少ないが、熱は発生してしまう。そのため、培養庫内の温度および、照射面の温度が設定温度よりも高くなってしまう。温度計にデータロガーを組み合わせ、培養期間内の温度を記録し、設定温度を調節して庫内温度の統一を行った。これらにより、照射波長の違いによるアラゲカワラタケ培養への影響を検証することが可能になった。 研究課題全体として、高温高圧水蒸気爆砕による木質バイオマスの前処理としての有用性を検討し、スギに対して高い分解効率を示した。続いて、光照射培養にて、生育に影響が生じ、糖化もしくはエタノール発酵に優位に働く菌株の選定を行った。LEDによる光照射を行い、照射波長によって糖生産、エタノール生産への影響を検討し、照射波長によって、物質生産への影響が得られた。光照射の影響の傾向は得られたが、数値再現性の改善を検討している。また、どのような反応機構で物質生産に影響が生じているのかの検証を進めている。
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