研究課題/領域番号 |
20K19996
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
廣江 綾香 東京農業大学, 生命科学部, 助教 (00709355)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 中鎖ポリヒドロキシアルカン酸 / 組換え大腸菌 / 生分解 / 分子構造 / 側鎖長 |
研究実績の概要 |
中鎖ポリヒドロキシアルカン酸(中鎖PHA)は、バイオプラスチックとしての利用が期待されるポリエステルであり、植物油や脂肪酸を原料として微生物合成されることが知られている。自然界では、主にシュードモナス属細菌で4種類以上のR体3ヒドロキシアルカン酸(3HA)モノマーから構成される多元共重合体として合成され、良好な生分解性を示す一方、非結晶性故に材料用途が限られていた。申請者らのグループでは、これまでに脂肪酸分解経路を改変し且つPHA合成に関わる遺伝子を導入した組換え大腸菌を用いることで、1種類の3HAモノマーのみから成る単一重合体(中鎖ホモPHA)の合成に成功しており、結晶性ポリマーとして材料用途を拡大した。一方で生分解性については不明であることから、本研究においてはその調査研究を目的としている。2020年度は、中鎖ホモPHAのうち、側鎖(アルキル基)長の異なる3種類の合成を行った。3種類の内訳は、ポリヒドロキシオクタン酸P(3HO)・ポリヒドロキシデカン酸P(3HD)・ポリヒドロキシドデカン酸P(3HDD)であり、いずれも2~3g/Lの合成を確認した。また、生分解性試験の実施に向けて、P(3HO)・P(3HD)・P(3HDD)を各2~3g抽出をし、精製を完了した。P(3HD)を水溶液中に分散させたエマルション溶液を作成したところ、1.3±0.1μmの均一なP(3HD)微粒子が確認され、且つ凝集することなく3カ月以上安定であった。本エマルション溶液は、酵素分解試験への利用が期待できる。なお、中鎖PHA分解能を有することが報告されているPseudomonas fluorescens由来のPHA分解酵素遺伝子(phaZ)についても本年度取得を完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020度は、コロナ感染拡大の影響により、研究活動時間の制限が生じた。そのため、当初計画と比較し、やや遅れる形となった。
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今後の研究の推進方策 |
来年度以降は、側鎖長の異なる中鎖ホモPHAに加え、共重合比の異なる中鎖ヘテロPHAの微生物合成と基礎物性解析を行う。また、合成した各種中鎖PHAについて、酵素分解試験を実施する予定である。酵素分解試験では、ポリマーの分解に由来する濁度減少や重量減少の追跡に加え、分解物および未分解物の詳細解析を行うことにより、生分解に寄与するポリマーの分子構造(セグメント)に関する知見の獲得を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はコロナ感染拡大による研究活動時間の制限により物品の購入費用が減少した。また、予定していた学会への参加が叶わず、次年度使用額が生じた。来年度は、研究を滞りなく進めるため、繰り越し予算にて実験補助の人件費を計上する予定である。
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