研究実績の概要 |
本研究では、新規微生物産生ポリエステルである中鎖ホモポリヒドロキシアルカン酸(中鎖ホモPHA)の生分解性について系統的な調査を行い、良好な物性と生分解性の両立を叶える分子設計について提案・実証することを目的としている。 昨年度(2021年度)は、4種類の中鎖ホモPHA(C6ポリマー、C8ポリマー、C10ポリマー、C12ポリマー)の酵素分解性について調査し、C6ポリマー>C8ポリマー>C10ポリマー=C12ポリマーの順で分解が進行しやすいことが示唆された。 2022年度はポリマー種を拡張し、6種類の二元共重合体(C6C8ポリマー、C6C10ポリマー、C6C12ポリマー、C8C10ポリマー、C8C12ポリマー、C10C12ポリマー)とモノマー分率の異なる5種類のC6C12ポリマー(C6:C12=18:82, 35:65, 52:48, 70:30, 86:14)の酵素分解性評価を実施した。分解酵素には昨年度と同様に、Pseudomonas fluorescens由来のPhaZPflを使用した。分解酵素を添加したポリマーエマルション溶液と添加していないポリマーエマルション溶液を一晩インキュベーションし、分子量変化を確認したところ、C6モノマーを含み且つC6モノマーの分率が高い共重合ポリマーほど、分子量低下が起こりやすく、また生じた分解産物量の重量が高まる傾向が確認された。本結果は、昨年度と同様にC6モノマーの分解性セグメントとしての重要性を支持する内容であり、また分解酵素がPHA主鎖を加水分解する際、側鎖のかさ高さが障害となる可能性など分解機構に関する理解の一助となるものである。
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