研究実績の概要 |
令和2年度は、没食子酸の二量体化により得られる1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロキシアントラキノン(ルフィガロール)の2、3、6、7位選択的アルコキシ化による2,3,6,7-テトラアルコキシ-1,5-ジヒドロキシアントラキノン(Gモノマー)の合成を行った。アルコキシ側鎖としては、分岐や環状構造を有するイソプロポキシ基、1-メチルプロポキシ基、2-メチルプロポキシ基、シクロヘキシロキシ基、シクロヘキサンメトキシ基を選択した。選択的アルコキシ化はハロゲン化アルキルの沸点以下、水酸化ナトリウムとジメチルスルホキシドを使用して約10gバッチにおいて行い、全ての選択的アルコキシ化が進行し目的とするGモノマーを得た。これまでに報告した直鎖アルコキシ基を有するGモノマーと比較して、分岐・環状の構造によらず2級アルコキシ基では収率が低下し、立体障害の影響が確認された。また、分岐・環状アルコキシ基を有するGモノマーは、直鎖アルコキシ基を有するRモノマーとジカルボン酸との界面重合で使用したジクロロメタンへの溶解性を有しており、同様の重合条件が適用可能であることが示唆された。このため、令和3年度以降はこれらのGモノマーに加え、置換基数の少ないα-レソルシル酸由来の3,7-ジアルコキシ-1,5-ジヒドロキシアントラキノン(Rモノマー)を用いたポリエステルの合成を行い、側鎖数・側鎖構造・コモノマーがバイオマス由来アントラキノンポリエステルの成形性や材料物性に与える影響を明らかにする。
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