研究実績の概要 |
令和3年度は、没食子酸の二量体化により得られる1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロキシアントラキノンの2,3,6,7位選択的アルコキシ化により得られる2,3,6,7-テトラアルコキシ-1,5-ジヒドロキシアントラキノン(Gモノマー)を用いた各種ポリエステルの各種物性解析と、続く成形加工を伴う各種物性評価に向けたGモノマーと芳香族ジカルボン酸クロリドを用いた界面重合のバッチアップ条件検討を行った。 Gモノマーと剛直な芳香族ジカルボン酸からなるポリエステルのキャストフィルムでは、透過X線回折像からフィルム面方向とフィルム厚方向で異方性を有していることが明らかとなり、全芳香族アントラキノンポリエステルにおいて一次構造の違いによる三次構造への影響が見られた。現在、この異方性を発現する一次構造に着目して、異方性の発現条件と三次構造や成形性、力学物性等の各種物性への影響を調査している。また、Gモノマーと芳香族ジカルボン酸クロリドを用いた界面重合のバッチアップ条件検討においては、これまでの溶媒量、塩基濃度、相間移動触媒の構造と量に加え、撹拌効率が得られる全芳香族アントラキノンポリエステルの分子量に大きく影響を与えていることを明らかにし、300mLのバッチで重量平均分子量200kg/molに達する全芳香族アントラキノンポリエステル約4gの合成に成功した。現在は、この知見を応用して各種成形加工検討を行うことを目的として、1バッチで約20gの全芳香族アントラキノンポリエステルを得られる合成法開発を進めている。
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