研究実績の概要 |
令和4年度は、没食子酸から2段階の反応により得られる2,3,6,7-テトラアルコキシ-1,5-ジヒドロキシアントラキノン(Gモノマー)を用いた各種ポリエステルの各種物性解析と大量合成に向けた濃縮条件での界面重合法探索を行った。 Gモノマーと4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテルから成る全芳香族ポリエステルでは、動的粘弾性測定においてガラス転移と等方相転移が見られたのに対し、示差走査熱量測定においてガラス転移のみが観測された。詳細に調べるため、偏光顕微鏡において昇温・降温下でGモノマーと4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテルから成る全芳香族ポリエステルを観察したが、静置状態で液晶相の形成は見られず非晶であった一方で、応力下で配向組織の形成が確認された。また、Gモノマーと4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテルから成る全芳香族ポリエステルのキャストフィルムでは、面内方向と面外方向の異方性を示したGモノマーとテレフタル酸から成る全芳香族ポリエステルのキャストフィルムと異なり、非晶であった。以上から、Gモノマーと4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテルから成る全芳香族ポリエステルは、ガラス転移温度以上・応力下で液晶相を形成することが示唆されたため、熱プレス後急冷したフィルムを作成し、偏光顕微鏡観察により液晶相の形成を確認した。また、動的粘弾性測定により観察された温度域で液晶相から等方相に転移することを確認した。 濃縮条件での界面重合法探索では、約40 mLのバッチで約1.2 gのGモノマーを用いたポリエステルの合成法を開発し、前年度の2倍濃度での合成に成功した。
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