研究課題/領域番号 |
20K20007
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
小林 翔平 東京農工大学, 学内共同利用施設等, 特任助教 (60868727)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アオウミガメ / 地球温暖化 / 小笠原諸島 / ドローン / 繁殖時期 / 産卵場所 |
研究実績の概要 |
本研究では東京都小笠原諸島のアオウミガメを対象に、(1)繁殖海域への来遊時期や交尾時期と水温との関連の検証、(2)メスの産卵時期や産卵場所と水温や砂中温度との関連の検証、及び(3)繁殖時期の雌雄差の検証を行い、成体期のアオウミガメが温暖化に適応できる生態を有するか検証することを目的としている。2021年度は(1)と(2)について研究を実施した。以下に研究実績を示す。 (1)昨年度に引き続きドローンを用いて空中より交尾海域を観察したところ、2021年は3月初旬から6月初旬まで交尾が観察され、2020年よりも交尾終了時期が遅かった。また昨年度同様、小笠原の水温と交尾終了時期に顕著な関連は認められなかった。 (2)昨年度に引き続き小笠原諸島大村海岸で産卵された巣の産卵日を解析した結果、2012-2021年の産卵時期の中央値は、産卵開始時期の小笠原の水温と有意な負の相関を示した。また、大村海岸は東側と西側で植生の様相が異なり、昨年度設置した温度ロガーのデータにより、海岸東側の砂中温度は低温に、西側の砂中温度は高温となることが明らかになった。そこで、2018年-2021年の間に大村海岸で産卵された巣の産卵場所を解析し、海岸内の産卵場所が月毎に季節変化するか検証したところ、気温や水温が高い7月は東側での産卵が多かった。さらに、小笠原の月毎の海水温と、東側での月毎の産卵率の間に有意な正の相関関係が認められた。以上の結果から、小笠原のアオウミガメの産卵時期や産卵場所は、小笠原の水温に応じて変化し得ることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は当初の予定通り研究を進めることができた。小笠原のアオウミガメの産卵場所が小笠原の水温に応じて変化し得ること発見したことは、期待通りの成果である。また、衛星発信機を用いた繁殖頻度の雌雄差に関する調査の準備も滞りなく実施した。以上を鑑みて、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は以下の研究を実施予定である。 (1)繁殖海域への来遊時期や交尾時期と水温との関連の検証: 昨年度に引き続きドローンを用いて空中より交尾域を観察することで、年毎のアオウミガメの小笠原への来遊時期と交尾時期を推定する。現在までの結果を合わせ、小笠原への来遊時期や交尾時期に小笠原や本州の水温が影響を及ぼすか否か検証する。 (2)メスの産卵時期や産卵場所と水温や砂中温度との関連の検証: 現在までの解析結果から、小笠原の水温が大村海岸での産卵時期や産卵位置を変え得ることを明らかにした。今年度は2022年のデータを取得、解析するとともに、これらの生態が地球温暖化のバッファーとなり得るか検証する。 (3)繁殖時期の雌雄差の検証: 小笠原諸島で成体オスを捕獲し、衛星発信機を取り付け長期的な回遊経路を追跡することで、オスの小笠原への繁殖来遊頻度を明らかにする。また、すでに明らかとなっている成体メスの繁殖頻度と比較し、繁殖頻度に雌雄差があるか否か検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
成体オスに発信機を装着し衛星追跡を行うための通信費として見積もっていたが、2021年度は衛星追跡を実施せず、次年度使用額が生じた。発信機の装着、及び衛星追跡は2022年度に実施予定である。
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