研究課題/領域番号 |
20K20009
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研究機関 | 埼玉県環境科学国際センター |
研究代表者 |
安野 翔 埼玉県環境科学国際センター, 自然環境担当, 主任 (80850007)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 水田 / 水生動物 / 群集 / 底生動物 / トウキョウダルマガエル / アキアカネ / サギ |
研究実績の概要 |
関東以西の温暖な地域では、比較的狭い範囲内の水田であっても田植え時期が大きく異なる場合がある。本研究では、田植え時期の違いが水田の水生動物群集やサギ類の水田利用に及ぼす影響の解明を試みた。埼玉県加須市内において、田植え時期の異なる計20枚の水田において、水生動物の掬い取り調査を行った。調査水田は、早植え栽培、普通期栽培、米麦二毛作の3タイプに分類することができる。早植え栽培の水田では、トウキョウダルマガエル幼生やアキアカネ幼虫が特徴的に出現し、他のタイプの水田ではほとんど確認されなかった。 二毛作水田では、ユスリカ幼虫が単作水田の10~100倍程の個体数が採集された。麦の収穫後に麦藁を土中へとすき込むことから、麦藁の分解物がユスリカ幼虫の餌資源となっている可能性が考えられた。そこで、炭素・窒素安定同位体比分析による餌資源推定を試みた。Chironomus属の1種は、麦藁に比べて5~10‰も高い炭素安定同位体比を示し、麦藁への依存度は限定的であった。一方、Dicrotendipes属やTanypus属への麦藁の寄与率は、水田によって大きく異なり、麦藁の分解有機物が必ずしもユスリカに直接的に利用される訳ではないことが示唆された。水生昆虫の個体数に影響する要因を明らかにするために、水田内の環境、餌生物の個体数(ユスリカ科幼虫と貧毛類)、農法を説明変数、調査日をランダム項とした一般化線形混合モデルにより解析したところ、水生昆虫の個体数は餌生物の個体数が多いほど増加する傾向が認められた。 サギ類による水田利用と田植え時期の関係を調べるため、埼玉県東部において自動車によるセンサス調査を行った。5~6月には、田植えの早い地域にサギ類の分布が集中していたが、7~8月になると、田植えの遅い地域で個体数の増加が認められ、時期に応じて田植え時期の異なる水田を使い分けていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
水生動物群集については、2年目も順調にデータを得ることができた。サギ類の水田利用状況については、当初から計画していた自動撮影カメラによるデータ収集はすでに完了しているため、現在は対象地域における季節的な空間分布を把握するための調査を継続しているところである。
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今後の研究の推進方策 |
水生動物群集については、引き続き調査を継続し、調査地点を増やすことで、上記の結果がより一般性を持つものなのかを検証していく予定である。サギ類についても、引き続き水田地帯における季節的な分布の変化を調査していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、国内学会での発表を2件予定しており、そのための旅費として使用する予定であったが、新型コロナの状況を踏まえてオンラインでの開催に変更となり、旅費を使用しなかったため。
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