研究課題/領域番号 |
20K20011
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研究機関 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 |
研究代表者 |
佐藤 允昭 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水研機構(神栖), 研究員 (10805865)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 生態系サービス / 気候変動 / サンゴ礁魚類 / 漁業 / 観光 |
研究実績の概要 |
本研究ではフィリピンから日本の黒潮流域のサンゴ群落において漁業・観賞魚の供給、ダイビング機会の提供といった魚類生態系サービスの供給可能量を算出し、緯度勾配を求めることと、既存データと現在の野外調査の結果を比較し、過去10~15年間の変化を各緯度帯で明らかにすることを目的としている。 まず、黒潮流域のサンゴ群集域における魚類群集の既存データを用いて、水産物、観賞魚、 ダイビングといったサービスの供給可能量を算出し、緯度勾配及び種多様性との関係を求めた。その結果、鑑賞魚とダイビングの価値は低緯度ほど高く(高緯度ほど低く)なる傾向がみられたが、水産物は熱帯と亜熱帯に2つのピークがみられた。また、どのサービスの価値も種多様性が高いほど高くなる傾向がみられ、生物多様性の保全が各生態系サービスの価値を高く保つためにも重要であることが示唆された。この内容については学術論文Population Ecology誌に発表された。 次に過去10~15年間の生態系サービスの変化を明らかにするために、2020年9月及び10月に温帯域の高知県内の2か所のサンゴ群落に出現するに魚類各種の個体数と全長を,ベルトトランセクト法を用いた潜水観察により調べた。両地点とも魚類の種数及び密度においては2009年・2010年と比べて大きな変化はなかった。一方、生態系サービスの供給可能量の算出についてはデータ整理を進めている段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1年目に既存の魚類群集データを用いて生態系サービスの供給可能量を算出し、緯度勾配及び種多様性との関係を求めることができた。また、温帯域の館山と沖縄本島の本部において冬季の魚類データが取得できた。一方、2020年は日本国内における新型コロナ感染者数拡大により亜熱帯域の琉球列島での調査が進まなかったため、現在までの達成度はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
コロナウイルスの流行状況をみながら、亜熱帯域の琉球列島を中心に調査を進める予定である。また、1年目に温帯域の館山と沖縄本島の本部において冬季の魚類データが取得できたため、今後、夏季にも同地点でデータを取得し、生態系サービスの季節変化に関する解析を進めることも予定している。一方、2年目に熱帯域のフィリピンでの調査も予定していたが、当地でもコロナウイルスの感染流行が収まっておらず、到着後に14日間の強制隔離が義務付けられていることやカウンターパートと大学において面会も許可されないことから、実質調査ができない状態である。そのため、フィリピンでの調査は3年目以降に延期する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では、初年度に日本国内の温帯域及び亜熱帯域の調査を進める予定であったが、新型コロナ流行により琉球列島でのいくつかの調査を行うことができずに終了したため、旅費及び人件費・謝金(用船・潜水補助費用)に残額が生じた。この調査実施の遅れに伴い生じた残額は、2年目の琉球列島を中心とした調査に使用する。
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