IoT(モノのインターネット)社会の発展にしたがい、身の回りの至る所にセンサシステムが設置されつつあり、その数は年々増加の一途を辿る。センサシステムの需要増により、重要な課題となるのが、それらを駆動するための電源である。エネルギーハーベスティングは、それらの電源代替あるいは長寿命化の技術として期待されている。本研究で対象とした摩擦帯電型ナノ発電機は、接触帯電と静電誘導により機械的振動を電気エネルギーに変換する振動発電の一種であり、人体動作のようなランダムで低周波の振動に対して発電可能である。本研究では、ウェアラブルデバイスの電源応用に向けた、透明で柔軟な摩擦帯電型ナノ発電機の作製と高出力化を目的とした。 まずデバイス構造として、水平方向の振動に対する高出力化のため、同一面内に電極を設置した構造を提案した。この構造の導入により従来のデバイス構造と比較し、水平方向の振動に対し3倍以上の高い出力を得た。また、高出力化に向けて、接触帯電による帯電電荷量の増加を目的として表面修飾手法としてフッ素プラズマ処理とAPTES(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン)処理を用いた。この2種の表面修飾処理により同一材料表面において帯電傾向の異なる領域を形成した前述のデバイス構造における出力改善に大きく寄与した。さらに、摩擦帯電型ナノ発電機で得られた出力を効率よく利用するため、プログラマブルユニジャンクショントランジスタを用いた間欠動作回路を設計し、簡潔かつ高効率な間欠動作を実証した。
|