研究課題/領域番号 |
20K20013
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
光斎 翔貴 立命館大学, 総合科学技術研究機構, 研究員 (80845826)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | リチウムイオンバッテリー / ライフサイクルアセスメント / 資源利用量 |
研究実績の概要 |
当研究では,最も包括的な資源投入指標である関与物質総量(Total Material Requirement, TMR)を用いて,LiBの各ライフサイクルステージにおける資源投入量を推計し,循環モデルの構築とフローの最適化を行うことで,資源の観点からLiBをライフサイクル的に評価することを目的としている. 当該年度ではまず,LiBの製造段階に注目し,製造に関わるエネルギーや材料を同定した上で,LiBの単位個数あたり単位重量あたりのTMRを算出した.また,TMRの計算過程において,電力ミックスの変化や鉱石品位の変化に対し,感度分析・モンテカルロシミュレーションを実施し,LiBのTMRにおける不確実性の評価を行った.この推計により,LiBに含まれる銅が資源投入において大きなインパクトを示し,LiBの高い資源強度が明示された.また,地球温暖化係数と比較することで,環境負荷と資源投入において異なる挙動が確認された.この成果はJournal of Cleaner Production(IF: 7.246)において誌上発表を行った. また,車載用のLiBは電気自動車に搭載されることから,従来の内燃機関自動車,次世代自動車であるハイブリッド自動車,電気自動車,燃料電池自動車の資源投入量を推計した.これより,電気自動車の製造においてLiBが全体の約半分の資源投入量を占めていることがわかった.またLiBの製造と同様,各種自動車を比較した際に二酸化炭素排出量はグリーンイノベーションにより低減される一方,資源使用量は増加する傾向が確認された.この成果はResources, Conservation and Recycling(IF: 8.086)において誌上発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度の目標であった,LiBのTMR推計のみならず,2年次の目標の一部である感度分析も初年度の内に完成し,インパクトファクターの高いジャーナルにおいて論文が採択されている.また,研究計画に付随した自動車の資源強度の分析も行い,上記の通りこちらもインパクトファクターの高いジャーナルにおいて論文が採択されている. さらに,LiBの資源循環モデルを構築する一歩として,簡易モデルが作成可能である照明機器に注目し,ポピュレーションバランスモデルを用い簡易的資源循環モデルの中で2050年までにおける資源使用量の予測を行った.資源循環の移行速度により,システム全体における資源利用量が大きく変化することが可視化された.この成果はResources, Conservation and Recycling(IF: 8.086)において掲載されている.このモデルは2,3年次に目標としているLiBの資源循環モデルの構築に大いに貢献しうると期待できる. 以上より,研究進捗や論文掲載は当初の計画以上に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
2年次の前半に予定していた感度分析を初年次に遂行できたので,2年次の後半から着手し始める予定であった循環モデルの最適化を早速開始する.ここでは,車両用LiBの使用後の車両用へのリユース,定置利用へのリパーパス,素材レベルへのリサイクルといった総合的なLiBの循環システムモデルを構築する.次に,都市鉱石TMRの概念を基に,文献調査や実地調査を通してインベントリーデータを作成し,各処理段階におけるTMR値を計算する.最後に,使用期間に伴うLiBの性能低下を考慮した上で,TMRの観点からみた循環モデルフローの最適化を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
Covid-19のパンデミックより,当初計画していた国際学会の参加がキャンセルとなったり現地参加ではなくオンライン参加となったりしたため,予想以上に旅費の利用予定金額が余ってしまった.その一方で初年度の研究によりLiBのリサイクル段階における問題点が露呈したため,今年度はLiBのリサイクル施設の見学や最終処分状況の視察等国内での旅費が必要である.
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