研究課題/領域番号 |
20K20016
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
兵法 彩 東京大学, 総括プロジェクト機構, 特任研究員 (30790216)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 産業連関表 / 再生可能エネルギー技術 / ライフサイクル評価 / 社会経済性 / 地域循環共生圏 / 地域施策 / システム設計 / Prospective LCA |
研究実績の概要 |
2020年度は実施計画のとおり、(1)地域産業連関表を用いた再生可能エネルギー技術(以下、再エネ)の環境・社会経済性評価と、(2)市町村における事例研究に取り組んだ。 (1)地域産業連関表を用いた再エネ技術評価では、まず分析ツールとして用いる都道府県産業連関表と市町村産業連関表の作成実態を調査した。その結果、都道府県産業連関表は1990年以降全ての都道府県で作成・公表されているが、地域によって部門分類が異なっており、直近で全都道府県の比較分析を行うには、2011年表の統合中分類表の利用が適切であることがわかった。都道府県に対し、市町村産業連関表の作成実績は少なく、電子データで入手可能な地域が特に限定的で、部門分類も比較的粗いことがわかった。市町村産業連関表の実態調査の成果は学会で報告し、調査に基づいて得られた知見と提言をまとめた論文を学術雑誌に投稿中である。また、都道府県産業連関表と再エネ部門拡張産業連関表(Renewable Energy-Focused Input-Output Table: REFIO)を用いた分析では、太陽光発電、風力発電、バイオマス発電の環境・社会経済性評価を行い、技術特性と産業特性による影響の違いを解析した。地域特性の解析には統計解析ソフトのクラスタ分析を適用し、都道府県の産業構成の特徴を明らかにした。 (2)市町村における事例分析では、対象地域と分析対象技術の選定を、地域の自治体職員の方の協力を得てオンラインで実施し、次年度に行う質問紙調査の準備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既存の産業連関表や付帯的な統計情報を活用して、47都道府県の産業構造に着目した再エネ技術施策の設計に資するシミュレーション解析を進めることができた。2020年度度前半は新型コロナウイルス感染症対策による活動制限で現地調査などが停滞したことで、地域との関係構築や研究・調査計画の提案に取り組めなかった時期があったため、次年度に行う事例研究の候補地が限定的となる可能性があるが、現時点で計画に大きな変更を及ぼすほどの影響は生じていない。一方で統計解析と文献調査に時間をかけることができたため、今後の技術評価や事例研究に向けた準備を確実に進めることができた。特に市町村産業連関表の作成実態に関する文献調査を網羅的・体系的に実施できたことで、地域のシステム設計における産業連関表の活用に関する知見と課題の整理につながった。また、2020年度後半には各地域におけるコロナ対策として打ち合わせのオンライン化が進んだことで、2021年度実施予定の質問紙調査関連の提案・意見交換を効率的に進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
公表されている統計データや文献情報を活用しながら、再エネ技術導入に適した地域条件に関するシミュレーション解析に引き続き取り組む。また現地調査の目途が立っている地域を対象とした事例研究を実施予定である。一方で、新型コロナウイルス感染症対策として活動制限が生じた場合における代替策(現地調査に代わるオンラインでのヒアリング調査、電子的手段による質問紙調査など)についても考慮し、対象地域の方々と相談しながら研究遂行に努める。また、2021年度は地域に適した再エネシステムの設計における指標構築に向けて、地域の統計情報や社会経済性指標に詳しい専門家や地域の実務担当者との議論の場を設け、実態把握と課題抽出に取り組む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症対策としての活動制限により、地域での現地調査が難しかったことや、参加予定だった学会の現地解散の中止・オンライン化によって旅費・その他の使用が少なくなった。また、事例研究に向けた地域との関係構築が若干遅れたことで、対象地域に関連するデータ購入(GISデータなど)についても次年度以降に延期した。地域との打ち合わせ等がオンラインで可能になったことをうけて、研究計画の提案・意見交換は実施できているため、社会情勢を踏まえながらも当初の計画通り現地調査等の出張や必要な情報・データ購入に資金を充てる予定である。
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