研究課題/領域番号 |
20K20019
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
江口 毅 山口大学, 情報基盤センター, 助教 (20783773)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | ドローン / 漂着ごみ / 機械学習 / 分光反射率 |
研究実績の概要 |
2020年度における研究実績は以下の4つである。 ①ドローンによる適切な撮影高度を検討するために、海岸の漂着ごみの組成調査を実施した。漂着ごみの検出に必要な解像度を明らかにして効率的な撮影を行うためには、どのような種類・大きさのごみがどのくらいあるのかという情報に基づいて撮影高度を決定する必要がある。そこで、漂着ごみの収集・分別・集計を行い、落ちているごみの種類・個数・大きさについて調査した。調査は、地域による偏りがでないように、宇部市キワ・ラ・ビーチ、長門市二位の浜、下関市涌田海岸の異なる3箇所で実施した。 ②漂着ごみの検出に有効となる波長を特定するために、ごみの分光反射率(スペクトル)の計測を実施した。漂着ごみの検出のためには、ごみと背景(砂地や植生など)やごみ同士を区別する必要があり、そのためにはそれらのスペクトルを把握する必要がある。そこで、まずは実験的に、バンカーや芝生の上にペットボトルや食品トレーなどのごみを設置し、それぞれのスペクトルの計測実験を実施した。 ③漂着ごみ検出用のドローン画像を撮影するために、下関市が実施する令和2年度漂着物調査に参加し、ごみの組成調査と調査前後のドローン撮影を実施した。ドローンによる撮影は、撮影高度の検証も行えるように異なる高度で複数回実施した。また、同時に漂着ごみや砂浜などのスペクトル計測を実施した。 ④研究成果の発表および最新の研究について情報を収集するために、日本リモートセンシング学会令和2年度秋季学術講演会に参加し、口頭発表を行った。学術講演会では、地上で計測したスペクトル値を基にドローン画像の反射率を補正する手法に関する研究について発表した。また、ドローンや機械学習に関する研究発表を視聴し、発表者の方と意見・情報交換を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進展している。 2020年度は新型コロナウィルスの影響により研究活動に制限があったが、県庁や市役所の関係部署への聴き取り調査についてはオンラインミーティングを利用することで予定通り実施することができた。しかし、ドローン撮影やスペクトル計測といった学外調査活動は、調査員の人数を減らしたり実施回数を減らすなどの措置をとる必要があり、必要最低限のデータは収集することができたが、必ずしも十分な調査が行えなかった。各要素研究の進捗状況は以下の通りである。 研究テーマ1「漂着ごみの検出に有効となる指標の研究」については、研究計画通り、下関市が実施する令和2年度漂着物調査に参加し、調査前後のドローン画像の撮影および漂着ごみや砂浜などのスペクトル計測を実施できた。しかし、ドローン画像もスペクトルデータもごみの検出に有効な波長や指標を検討するためには数が十分ではないため、2021年度も引き続きドローン画像の撮影とスペクトルデータの計測を実施する必要がある。 研究テーマ2「検出結果からごみの量を算出する方法の研究」については、研究計画通り、ごみの組成調査を実施することで、ごみの種類や個数、色、大きさについて情報をまとめることができた。しかし、ごみの種類別の平均サイズと体積(量)の関係性について明らかにするためにはデータ数が十分ではないため、2021年度も引き続きごみの組成調査を行う必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
2021年度は、漂着ごみ検出用のドローン画像や検出に有効な波長や指標の検討に用いるスペクトルデータの数を充実させるために現地調査を引き続き実施する。特に、機械学習用の教師データ作成のために、ごみが大量に落ちている場合やごみが砂地以外に海藻や植生の上に落ちている場合など、条件の異なる場合のデータを多数収集する。各要素研究の方策は以下の通りである。 研究テーマ1「漂着ごみの検出に有効となる指標の研究」については、ごみと背景やごみ同士を区別するために有効となる波長を引き続き検討する。また、異なる波長のデータを組み合わせて作成する指標についても検討を行う。更に、砂地の上に落ちている漂着ごみ以外にも、海藻の上や雑草などの植生の上に落ちている場合、ごみが大量に落ちている場合やごみの種類や大きさなどが大きく異なる場合についても現地調査を行い、条件の異なる画像やデータを収集する予定である。 研究テーマ2「検出結果からごみの量を算出する方法の研究」については、地域によるデータの偏りがないように、異なる複数の地域でごみの組成調査を引き続き実施し、ごみの種類別の平均サイズと体積(量)との関係性について調査する。また、調査結果に基づきごみのサイズから量を算出するための式について検討する。 研究テーマ3「UAV画像からごみの分布および量を自動で算出するアルゴリズム開発」については、研究テーマ1と2の結果を基に機械学習用の教師データを作成する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ドローンの画像処理ソフトについて、ドローンの購入時に有償画像処理ソフトの1年間有効ライセンスが付帯されていたため、2020年度におけるソフトウェアの購入は行わなかった。2021年度はライセンスの有効期限に伴い、画像処理ソフトを購入する。 ドローンの保険について、ドローンの購入時に1年間有効な保険が付帯されていたため、2020年度は保険料が不要であったが2021年度以降は保険料が必要となる。そのため、2020年度において研究の遂行に支障が無い範囲で物品の購入を控えることで2021年度以降の保険料に充てることとした。 謝金および旅費について、2020年度は新型コロナウィルスの影響により、現地調査の実施回数や補助員の数を減らす措置をとる必要があった。そのため、研究計画通りの出張や現地調査が行えず、これらに関連する諸経費や謝金の執行ができなかった。2021年度は、2020年度に実施できなかった分の現地調査および出張を、規模を縮小した形で実施する。
|