2023年度の研究実績の概要は以下のとおりである。 昨年に引き続きデータ包絡分析法(DEA)・領域化学輸送モデル・統合曝露反応モデル等を用いた健康影響評価モデルを統合することで、非効率な発電を行う石炭火力発電所に対する排出抑制技術の導入および抑制技術水準の高い新規発電所への代替等で改善される大気汚染物質排出量と健康被害を推計し、論文としてまとめ上げた。本研究結果は査読付き英文誌Energy Economics誌に掲載された。 また、発電部門をはじめとした炭素排出量の多いセクターに対する環境政策としてはEnd of pipeの技術に注目されがちであるが、サプライチェーンを通した排出削減も重要であることから、サプライチェーンを構成するセクターの特徴を捉える構造的位置分析の枠組みを構築した。本研究で提案した枠組みは、グローバル・サプライチェーンにおいて最も優先順位の高いセクターと取引、そしてCO2排出削減のための最適な戦略を明らかにした。本研究結果は査読付き英文誌Journal of Industrial Ecology誌に掲載された。 さらに、発電部門のような多くのセクターの投入要素として用いられる中間財としての排出責任を捉える新たな指標を開発し、グローバル多地域産業連関表を用いたケーススタディを行った。その結果日本やアジアでは、中間財ベースでの排出量がサプライチェーン全体の排出量と密接に関係していることが観察され、排出量を削減するためには協力が必要であることが明らかになった。本研究結果は査読付き英文誌Journal of Cleaner Production誌に掲載された。
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