今年度の目標は、全国の自治体アンケート調査によって把握した、普及啓発施策の詳細な実施状況に関する情報を用いて、住民への介入方法の違いが生活系ごみの排出量に与える影響を実証的に明らかにすることとした。 前年度は重回帰分析(OLS)から31類型の普及啓発施策の中から、とくに減量効果が期待できるものとして、座学セミナー(主として住民説明会や環境学習)、廃棄物減量等推進員、言語プロンプト(主としてスマホアプリ)の施策を見出した。これを踏まえ、今年度は、傾向スコア・マッチングを行って、それぞれの施策にフォーカスした詳細な効果分析を行った。その結果、廃棄物減量等推進員の施策、言語プロンプトによる施策は減量効果が示唆されたが、座学セミナーによる施策に関しては減量効果を示唆する結果は得られなかった。分析方法の検証のため、OLSにおいて減量効果の認められなかった一方向の情報発信型(主として回覧板事業)についても、傾向スコア・マッチングによる分析を行った。その結果、やはり減量効果は認められず、このことからも得られた上記の分析結果はおおむね妥当と考えられる。 以上の知見は、OLSに加えて傾向スコア・マッチングによる分析も行うことで、より正しい政策効果の実証に近づけることを示唆している。そして、普及啓発施策におけるアプローチ方法の違いが、異なる減量効果をもたらす可能性が示された。このことから、自治体においてごみ減量化政策を設計する際には、住民の循環型社会に対する認識度の現状把握だけでなく、規範的意識に対する政策の異質性も理解する重要性も示している。
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