研究課題/領域番号 |
20K20034
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
田中 利和 龍谷大学, 経済学部, 准教授 (50750626)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | エチオピア / 役畜 / 農耕文化複合 / ローカルイノベーション |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は人と「役畜」と作物の関係の実装を切り口に、さまざまな環境・社会変容に対応してきた地域の農耕実践をローカルイノベーションの観点からあきらかにし、未来可能性を検討することである。本研究はエチオピア高地に位置する2つの役畜利用が盛んな農村を主な対象とし、社会・文化・生態に着目をしながら集中的なフィールドワークを実施し、今のアフリカにおける特有の「役畜」と農耕をつうじて柔軟にいきぬくユニークな社会を描き出すことを目的としている。 初年度の2020年度は、コロナウィルスの影響により、予定していたフィールドワークを実施することができなかった。そのため本研究に不可欠であるフィールドワークによる現場の情報と、イギリスでの文献資料を入手することができなかった。そこで、2007年から、おこなってきたエチオピア農村のフィールドワークのデータを再整理することに努めるとともに今後の切り口となる点について再考をした。あわせてアジア・アフリカ地域の農業・農村社会を対象としたフィールドワークによる研究に関心を抱く、研究者との交流を通じて、2回の研究会を開催した。その結果、地域間比較やフィールドワークの実施方法などを今後も定期的に検討していく目処がたった。 日本国内においても、一般社団法人馬搬振興会の活動にも、本研究テーマの関心をもとに参与し、アフリカ出身者とともに、国内における役畜による馬耕実践の場に参加し意見交換をおこなった。日本の技術を活かしたアフリカにおける役畜用の改良犂開発にも関わることを通じて、現代日本における役畜利用の歴史と今後のイノベーションにむけた実践の動向の情報を得られることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題は現代エチオピア農村のリアルな現場を対象している。コロナウィルスの影響で、渡航ができなかったものの、2007年度からのフィールドワークの研究資料の整理、他のアジア・アフリカ地域で農村を対象にフィールドワークをおこなう若手研究者との研究会の開催と発表という点では進捗があった。「役畜利用」と「ローカルイノベーション」という点において議論の機会を得て、今後調査をおこなっていく方向性を検討することに成功した。また、異分野の研究者とのオンラインによる研究会の共催と本研究課題の発表をつうじて、研究課題をより広い文脈で説明をすることができ、考察の枠組みを広げることができた。このことは農耕文化複合やローカルイノベーションを考えていくうえでは重要な点であり、今後も継続的に異分野の人びととの交流と協働の基盤を作れた点もふくめて、進捗していると評価することができる。 しかし、総合して本年度の本課題の研究進捗状況が「やや遅れている。」と総合的に判断したのは、フィールドデータの収集と、関連する役畜利用のと開発に関する資料収集が、コロナウィルスの影響で、全くできなかった点にある。 海外渡航はできなかったものの、日本国内において「一般社団法人馬耕振興会」との関わりを得られた年度であった。現代の日本国内の役畜利用実践に関する情報収集は予備的におこなうことができ、考察をすすめることができた。しかし、本研究課題であるアフリカ・エチオピアの役畜利用とイノベーションという課題を推進、補強していくためのデータとしては、質と量ともに十分とは言い難い。この点もふまえて本年度は総合的にやや遅れているという自己評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
コロナウィルスが蔓延しつづけている現在の状況下では、フィールドワークと海外の文献に依存する本研究計画は柔軟に変化する必要があると考えている。現在この状況下で、できることを続けていくことが重要であると考える。具体的には、アジア・アフリカ地域でフィールドワークをおこなってきて研究者との今後の研究推進方法や調査に関する議論が考えられる。例えば、現地の人とのオンラインインタビューの可能性の検討や実施、地理情報、歴史的な情報の分析などがあげられるだろう。あわせて、専門をこえた人びとの交流を通じて、調査手法などを本研究のアプローチの一つとしてとりいれ、今後のフィールドワークに備えた、分析手法の拡張と協働の可能性を広げたい。 そしてこの機会に積極的に、日本国内の「役畜」と現代の「農耕文化複合」の研究について、研究をすすめたい。日本の歴史と現代の役畜利用の実践と復興の兆しのなかに、今後の本研究を発展させる可能性がある。将来、役畜と生きるエチオピア農民と日本の役畜利用の実践者とのフィールドをつうじた交流というアイデアも芽生えた。このような複合的な要素の機会を実践的に創出していくことも、今後本研究を推進し、役畜農耕文化複合のイノベーションを考えていくうえでの大きな力になると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたフィールドワークの旅費を使用する機会がなかったため、次年度使用額が生じた。この金額は次年度のフィールドワークの使用を計画している。
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