研究課題/領域番号 |
20K20037
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研究機関 | 国際ファッション専門職大学 |
研究代表者 |
直井 里予 国際ファッション専門職大学, 国際ファッション学部, 講師 (50757614)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 難民 / ドキュメンタリー / カレン人 / 帰還 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、タイ・ビルマ国境に位置する難民キャンプで暮らす難民たちが、難民キャンプの閉鎖後、故地カレン州に帰還し、新たな社会関係を形成し、日常生活をどのように営むのか、「帰還」をめぐる難民のコミュニティ形成を過程を明らかにすることである。分析にあたっては、2008年から約14年に渡り作成しているドキュメンタリー映画を用いる。本研究は、これまで、難民キャンプと第三国定住地で行ってきた、難民の移動と定住に関する分析の、先端に位置づけるものである。 本年度は、これまでの調査において撮影してきた約155時間に及ぶ調査記録映像のテープと、撮影の分と併せ映像の分析をした。また、コロナ渦が落ち着いたので、4年ぶりに現地での撮影を進め、フィールド調査を行った。さらに、これまでのデータや映像をまとめ、単著執筆と映画編集を進めた。その際、現地(タイ)の大学や図書館、国際協力機関および国際支援活動団体などから、統計資料を収集した。これら、難民をめぐる長期にわたるドキュメンタリー制作を通して、難民キャンプと、第三国定住地と、故地とのつながり、人間関係の通時的変容の過程を考察した。 また、カメラがカレン難民の生活空間に入り込む際、撮影者と撮影対象者の関係性がどのように形成され、彼らの社会関係形成に影響し、映像がどのように表象されるかを分析した。さらに、カレン難民コミュニティに向けて作品を上映し、当事者同士のディスカッションを記録・分析し、さらに、難民の受け入れ側社会や一般向けにも作品を上映し、観客の難民に対するイメージが映像表象を介してどのように構成され〈現実〉として受容されていくのかを分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020~22年度において、コロナ渦およびクーデターにより現地フィールドが行えなかったため。また、クーデター後、難民の帰還事業も滞ってしまったため。
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今後の研究の推進方策 |
完成した映像を理論的に分析していき、難民の移動と定住に関する考察をまとめ、成果を単著にまとめ出版する。また、完成した作品を国際映画祭や難民映画祭などで上映し、作品についてのディスカッションの場を設け、さらに映像として記録・分析する。作品上映における観客との相互行為(研究対象者となる人々とのディスカッションを含む)によって、映画がどのように解釈され、研究対象者にどのようにフィードバックされるか分析する。学術、東南アジア学会やタイ学会、映像学会をはじめ、国内外の学会などでも上映していき、学術研究と映像分野における双方の相互関係性の中で、議論をすすめていく。さらに、完成した映画を、対象者を含め異なる立場のオーディエンスの目を通して自己再帰的に観察・分析し、映像活用による難民理解の有効性とその表象の可能性と限界、また、どのような映像が地域研究への学術的貢献となり得るかを考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
クーデター発生により、調査が遅れてしまったため。来年度は、これまでの調査をまとめて、単著を執筆と映像を完成され、成果発表を行う。
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