研究課題/領域番号 |
20K20043
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研究機関 | 関東学園大学 |
研究代表者 |
金 承華 関東学園大学, 経済学部, 講師 (90828013)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 退耕還林政策 / 新退耕還林政策 / 貧困達出 |
研究実績の概要 |
本研究は、中国の森林政策である退耕還林政策に焦点を当てて省別のパネルデータを用いたマクロ的な分析とアンケートデータによるミクロ的な分析から、総合的な政策評価を下すことである。また、退耕還林政策が気候変動緩和への貢献を森林の炭素吸収量の変化から評価をする。最終的に、他の先行研究の成果も踏まえて、「新退耕還林政策」の成果を総合的に評価する。 2020年度は、退耕還林政策の有効性についてマクロデータによる理論と実証研究を行った。まず、第1期の退耕還林政策について、経済理論モデル(土地利用モデル)を構築し、そのモデルをベースにパネルデータ分析を行った。その結果、退耕還林面積の拡大要素とし家畜の保有量、果物の生産量、賃金収入、退耕還林に対する政府からの投資額などがあることをわかった。以上の研究は、韓国の学術雑誌であるThe Studies in Regional Development(査読付き)に掲載された。 次に、退耕還林政策と貧困削減の関連性について、省別のマクロデータを用いて実証分析を行った。この研究では、まず、第1期の退耕還林政策の導入背景を踏まえた上で、2014年から実施された新退耕還林政策と新規性、とりわけ、政策目標・政策手段・政策効果が、第1期の政策と比べて、どのように違いがあるかを整理した。その上で、第2期の退耕還林政策の実施目標でもある貧困達出の効果について、マクロデータによる定量的な政策評価を行った。その結果、特に2016年から貧困地域を中心にした退耕還林政策の遂行によって、地域の貧困発生率が減少していることが示され、一定の政策効果があったことが明らかになった。これらの研究については、2021年度日本応用経済学会春季大会(6月)で報告する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は、計画していた研究の一部を実施し、一定の成果報告をすることができた。他方で、最初に立てた計画からの遅れも生じている。当初は、マクロデータによる分析として、①新退耕還林政策の有効性について検討することと、②中国の森林政策が二酸化炭素の削減へ効果があるかを明らかにする予定であった。政策の有効性については、二つの論文を執筆し、うち一つは海外の学術雑誌に投稿した一方で、2020年からの新型コロナ(COVID-19)禍の影響で、中国での現地調査の準備を進めることができず、フィールド調査に基づく研究については遅れが生じている。また、森林政策が二酸化炭素の削減への効果については、先行研究のレビューに留まり、実際にデータによる実証分析は行えていない。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画としては、新型コロナの状況を踏まえながら、2020年で実施予定だった中国での現地調査の準備を進める。計画では、2021年度の3月に現地調査を行う予定で日程調整を行っている。また、現地調査の準備と同時に、今年度整理した先行研究のレビューを基に、中国の森林政策が二酸化炭素の削減への効果についての分析も進める。さらに、これまでの退耕還林政策において、造林面積に与えた要因が何であるか、および第1期と第2期でその要因に違いがあるかどうかを示す。そのために、まず、今年度に発表した論文の経済理論モデルを用いて、比較静学を行い、その因果関係を理論的に整理し、次に、その理論的な結論を統計的に支持されるかを分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては、新型コロナの影響で、予定であった情報収集のために国内外の学会への参加や現地調査の準備などをすることができなかったからである。 次年度使用額と翌年度分として請求した助成金と合わせて、2021年度は、現地調査のための旅費、情報収集や研究成果を発表するために学会参加費を含めた旅費、アンケート質問用紙の印刷代、現地調査を円滑に実施するために、現地コーディネーターである研究協力者への謝金、研究成果を論文に投稿するために必要な研究成果投稿費(英文添削、論文投稿料等)などとして使用する予定である。
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