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2023 年度 実施状況報告書

現代エジプトの家族法の変化と運用の研究

研究課題

研究課題/領域番号 20K20045
研究機関高千穂大学

研究代表者

竹村 和朗  高千穂大学, 人間科学部, 准教授 (60782654)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2025-03-31
キーワード家族法 / 身分法 / 家族裁判所 / イスラーム法 / エジプト / 刑法 / 刑事裁判所
研究実績の概要

本研究の最終年度(ただし1年延長の申請・承認済み)にあたる2023年度には、「家族法の変化と運用」について、おもに2つの側面から研究を進めた。
(1)身分法の包括改正案は、2021年1月にエジプト議会(下院)に提出され審議されたが、さまざまな意見が出て一旦棚上げされた。2022年5月に大統領が再度の法案作成を呼びかけたため、司法省内でワーキンググループが発足し、検討作業が始められた。2023年1月には途中経過報告も報道されている。論文「「6月30日革命」体制におけるアズハルの独立と統制――新身分法制定をめぐって」では、この動きの経緯を追いかけるとともに、論議の裏で問題になっていた大統領と宗教教育機関アズハルとの駆け引きと政教関係を論じた。
(2)身分法規定の実際的な運用を知る手がかりとして、夫婦の離婚の際に用いられることのある夫が妻に帰宅を促す書面(「順従の催告」)と、妻の家財道具リスト(「婚姻の動産目録」)を用いた夫に対する刑事告訴の手続きに着目し、論文「婚姻の動産目録- エジプトのムスリム家族法と女性を守る慣習法的仕組み - 」にまとめた。「順従の催告」は身分法にもとづき家族裁判所を通じて実施され、これが妻によって拒否されると離婚調停に進むが、その一方で「婚姻の動産目録」にもとづく訴えは刑事裁判所で受理され、夫にしばしば即時の判決(最大で拘留刑3年)が言い渡されることがある。これら2つの手続きが絡み合いながら、裁判内・外の交渉を含め、離婚協議が進められることが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2023年度には、(他科研による助成を受け)8月と2月に一度ずつエジプトに行き、追跡調査と資料収集を行うことができた。過年度に行った調査にもとづく論文を2篇発表した。本研究課題はエジプトの法律(アラビア語)と深く関わるが、その関連で参加している弁護士らの研究部会がエジプト民法典のアラビア語からの全訳を出版し、その編纂作業に加わった。また、その他関連する研究会でのコメント発表を通じて、法制度の内容・運用の理解を深めることができた。

今後の研究の推進方策

本研究課題は、2023年度を最終年度としていたが、コロナ禍による調査実施の遅延が生じたため、研究期間の1年延長を申請し、すでに承認を受けている。昨年来中東の一部で政治的緊張が高まっているが情勢を注視しつつ、2024年度にもエジプトに渡航し、家族法の運用と法改正に関する資料収集・調査を継続するとともに、本研究課題の全体をまとめる作業を進めていく。

次年度使用額が生じた理由

コロナ禍による前年度からの繰越分があった上、本年度の旅費は他の科研から賄うことができたため、旅費支出が少なく済んだ。この分を使用し、研究の遅れを補完するため、1年の研究期間延長を申請し、承認を受けている。この金額はおもに2024年度の旅費として使用し、エジプトでの追跡調査・資料収集を実施する予定である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (2件) (うちオープンアクセス 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (3件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 婚姻の動産目録- エジプトのムスリム家族法と女性を守る慣習法的仕組み -2024

    • 著者名/発表者名
      竹村和朗
    • 雑誌名

      高千穂論叢

      巻: 58(3/4) ページ: 95-128

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 「6月30日革命」体制におけるアズハルの独立と統制――新身分法制定をめぐって2023

    • 著者名/発表者名
      竹村和朗
    • 雑誌名

      中東研究

      巻: 547 ページ: 29-41

    • 査読あり
  • [学会発表] 大河原発表「家族復元とシャリーア法廷史料」へのコメント2023

    • 著者名/発表者名
      竹村和朗
    • 学会等名
      第21回近代中央ユーラシア比較法制度史研究会
  • [学会発表] 出川報告へのコメント2023

    • 著者名/発表者名
      竹村和朗
    • 学会等名
      第20回近代中央ユーラシア比較法制度史研究会
  • [学会発表] Comments with Some Legal Texts and Translations2023

    • 著者名/発表者名
      Kazuaki Takemura
    • 学会等名
      Seminar on Land Tenure, Inheritance, and Gender in Middle East
  • [図書] エジプト民法典2023

    • 著者名/発表者名
      第一東京弁護士会総合法律研究所現代中近東法研究部会(共訳)
    • 総ページ数
      475
    • 出版者
      第一法規
    • ISBN
      9784474092877

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公開日: 2024-12-25  

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