研究課題/領域番号 |
20K20049
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
井手上 和代 明治学院大学, 国際学部, 専任講師 (00838435)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アフリカ / 零細企業 / インフォーマル / 資金調達 / ケニア / モバイルマネー / モーリシャス / 製造業 |
研究実績の概要 |
本研究は、サハラ以南アフリカにおける情報通信技術を用いた金融の発展に着目しつつ、製造業をけん引するインフォーマルな中小零細事業者の資金調達構造と在来金融の変容について解明することを目的としている。
令和3年度の研究計画は、当初、ケニアのナイロビで金属加工業を営む小規模・零細事業主へ資金調達に関するインタビューを実施し、かれらがどのように資金を調達し、その生産活動に結びつけているのか、また生産形態と金融アクセスのあり方との関係について考察し、中間報告として国際会議や研究会で発表を行うことを予定していた。しかし、前年度に引き続いて新型コロナウィルスの感染拡大が収まらず、現地調査を実施する見通しが立たなかったため、当初の計画を大幅に変更して現地の調査補助会社の協力を得て、感染症対策を十分にとってもらった上で2021年9月に調査対象者に対してオンラインでのインタビューを実施した。
今年度の研究成果は以下のとおりである。第1にモーリシャスの製造業発展における地場企業の役割についての研究成果を英語書籍に公表することができた。第2にアフリカ各国の産業政策に関わる行政官を対象としたJICAによる遠隔研修において、これまでの研究成果についての発表を行い高い関心を獲得した。特に令和3年度の研究において重要だったことは、ケニアの金属加工業を営む零細業者にコロナ禍における生産活動や資金調達の状況について、オンライン上で直接聞き取りができたことである。これにより、コロナ禍における危機的な状況の中での資金調達上の課題が明らかとなった。特にこのコロナ禍でケニアでモバイル・マネー取扱店舗が増えており、人々の間での携帯電話を通じた金融取引が加速している一方で、耐久消費財としての金属加工品を製造する零細業者にとって様々な資金調達上の課題が生じていることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、2020年度と2021年度にケニア(ナイロビ)での調査を行う予定だったが、2年間にわたり現地調査が実施できなかった。このため、現地の研究調査補助会社の協力を得て十分な感染対策をとった上で、オンラインでインタビューを行った。当初の予定では、金属加工業が集積する2つの対象地域それぞれでインタビューを行う予定だったが、現地の感染状況を踏まえて、一つの対象地域に絞って集中的なインタビューを行うこととなった。したがって、本研究の目的の範囲内ではあるものの、対象地域と対象者が限られたため、当初のインタビュー対象者全員には調査を実施できなかった。加えて、2021年4月から研究代表者が新たな研究機関に異動したことに伴う新たな業務の増加などにより、異動前に当初予定していたエフォート率で研究に割く時間が十分に取れなかったことなどによる。
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今後の研究の推進方策 |
令和年3年度はオンラインを通じて、ナイロビで金属加工業に従事する小規模零細職人に対し、インタビューを実施した。対象者が限られていたことと、1名に対して1時間以上の聞き取り調査を実施し、より詳細な口述データが得られたことから、今後は質的分析をさらに進めるとともに、国内外での研究成果の報告およびジャーナルへの論文投稿を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、2021年度に現地調査のためケニアへの渡航を予定していたが、新型コロナウィルス感染拡大のため実施できず、「旅費」の支払いが生じなかったためである。今年度は現地調査および国内外での研究成果の発表を検討しており、それに伴う諸経費としての使用を計画している。
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