研究課題/領域番号 |
20K20055
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
川村 藍 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 助教 (00816358)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | イスラーム金融 / 地域研究 / 社会経済学 / 比較法学 |
研究実績の概要 |
2020年度はコロナの影響で臨地調査はほとんど延期し、イスラーム金融をめぐる民事紛争処理制度から新たな経済や社会現象に対する立法過程に着目し、これまでの研究データをもとに国際会議の発表、英文単著1冊と英文共著を1冊を出版した。 英文単著は、これまでの研究データをAJIブックレットシリーズとして、"Grafting an Islamic Sapling onto the Tree of Legal Dispute Resolution: Alternative Approaches to Civil Disputes in Islamic Finance in the Gulf & Southeast Asia"にまとめて上梓した。 社会経済学発展学会(SASE)での発表をもとに、デジタル経済による新たな規制監督制度をアラブ首長国連邦での取り組みに着目し、新たな経済現象から価値が創出され、それが法によって保護ないし、取引される市場を安定させるための仕組みについて、英語での研究発表を2件行った。 英文共著として、メフメット・アスタイ教授が提唱している従来のイスラーム経済学をより、イスラームの正義を実現することに重きをおいたイスラミック・モラルエコノミーの議論に関する情報収集を行い、SASEでのフィードバックをもとに"The Development of Institutional Frameworks of Islamic Economy: A Historical Experience and New Initiatives in Malaysia"の共著"Grafting the Malaysian Model into Islamic Finance Dispute Resolution"を執筆し、2021年出版した。 また、デジタル経済に関連したイスラーム金融の新たなビジネスモデルも台頭していることがわかり、これらに関する情報収集を行い、1月と3月の国際会議で発表し、来年度の研究計画を調整している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現地での臨地調査を実施できず、資料収集や現地のイスラーム金融関係者への聞き取り調査も実施できなかったため、新たな情報収集と分析がほとんど延期となってしまった。ただし、文献調査やウェブでの情報収集をもとに、可能な限り研究を続け、英文の冊子2冊を執筆し、国際会議での発表を実施することができた。文献調査を中心に、情報のアップデートを行い、また、共同研究者との打ち合わせや議論から、情報収集を行い、研究内容のブラシュアップを行った。コロナの影響で、現地での実態調査ができなかったが、研究協力者への働きかけや文献、ウェブでの情報収集によって、研究活動を継続することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
研究協力者からの情報収集を行い、文献調査を充実させながら、コロナ下でもイスラーム金融に関連した新たな価値観がどのように議論されているのか、特にデジタル経済に関連した情報収集を行う。コロナによりイスラーム世界において、ライフスタイルや働き方が変化し、ニューノーマル時代にどう適用すべきか、新たな技術を導入する場合の議論などが盛んになされている。 昨年度の研究から、イスラーム世界の貧困削減のためにデジタル経済を活用した新たなビジネスモデルが登場しており、これらの情報収集を研究協力者との調整をして行う。 また、コロナを契機として、イスラーム経済でも食糧安全保障への関心が強まり、様々なプロジェクトが始動していることからも、これらの情報を追いながら、イスラーム世界から創出されている価値観について探究する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響で渡航制限があり、予定していた海外調査ができず、延期せざるを得ない状況になったため、次年度使用額が生じることになった。予定していたアムステルダム大学での社会経済学発展学会の発表がウェブ会議に変更となり、欧米での渡航制限や入国制限措置が行われた。そのため、コロナの影響でオランダへの研究渡航が困難となったため、海外調査を全て延期することになった。コロナが落ち着いてライデン大学での研究調査を行う状況が整うまでは、2020年度に予定していた資料収集や研究会の開催等も延期することになった。 コロナの影響が収まるのを待って、研究協力者や関連機関での情報収集を実施する。 今年度に、コロナによる渡航制限や入国制限措置が緩和され、調査を行う環境が整えば、現地の研究協力者と連携しながら、海外調査を実施する。また、2020年度の研究調査をもとに、デジタル経済に関連したイスラーム世界に創出された社会的経済的価値について文献調査を中心に実施する。
|