研究課題/領域番号 |
20K20055
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
川村 藍 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特任研究員 (00816358)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | イスラーム金融 / 経済社会学 / 地域研究 |
研究実績の概要 |
これまで、イスラーム金融の民事紛争に関わる議論から、イスラーム世界においてどのように「価値観」が生成され、新たな「価値観」からどのような社会構造や制度が構築されるのか、またはされるべきなのかを経済社会学やイスラミック・モラル・エコノミーの議論を取り入れて分析した。整理してきた先行研究からのイスラミック・モラル・エコノミーの分析枠組みに当てはまる事例収集に取り掛かった。
本年度はコロナ禍を契機に新たにあるべき「イスラム経済制度」の議論が再燃しており、Fintechの普及などを通じて、イスラーム経済の在り方が問い直されている。イスラミック・モラル・エコノミーを通じた分析枠組みに適合する事例を民事紛争からデジタル経済圏に係る新動向に重点を置いた。研究手法として、イスラミック・モラル・エコノミーによる社会制度の分析枠組みについて分析できたが、コロナ禍により、法的な争いに新たな動向が見られず、また、専門家へのインタビューも入国制限解除後でも、研究機関や資料が所蔵される図書館や資料館が閉鎖されていたため、研究活動が制限された。Zoomなどウェブでの専門家インタビューを実施したが、専門家もコロナ禍で調査遂行に制限があった。
コロナ禍を契機として新たな「価値観」がデジタル経済圏や現地のコミュニティでも相互扶助のモデルが強化されるなどしている。これらの活動についてマレーシア、インドネシアの現地研究協力者とコンタクトを取りながら、新たに情報収集を新たに行っている。 マレーシアでは11月に政権交代もあり、モラルエコノミーを構成する機関について調査を実施することが難しくなり、次年度に研究を延長せざるを得ない状況となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ感染予防政策により、国際会議が延期したり、調査予定の専門機関が閉鎖されたり、イベントも制限されたため、研究のアップデートができなかった。ウェブや現地の報道による情報収集や専門家へのインタビューはできたものの、デジタル経済に関連する項目以外は、ネットで情報収集では限界があった。
イスラーム金融に関連する政策や政治的動向に関する情報はマレーシアでは政権交代などによる混乱もあり、現地での情報収集や専門家との議論ができなかった。前年に固めてイスラミック・モラル・エコノミーによる分析枠組みを使って、イスラーム世界に創出された「価値観」が何なのか、コロナの影響もあり、再検討することが必要だと認識し、分析枠組みの再検討するに至った。
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今後の研究の推進方策 |
イスラミック・モラル・エコノミーの分析枠組みの第一人者であるメフメト・アスタイ教授と議論しながら、イスラーム世界に登場したイスラーム金融に関わる新たな「価値観」が何なのか、明らかにする。
前年ではコロナや政権交代で断念せざるを得なかった、現地での情報収集では、昨年調整した現地での研究協力者を通じて、定量的な調査設計を依頼し、効率的な情報収集を実施する。
デジタル経済で登場した新たな取引をめぐり、どのような価値観をもとに、新たな制度やビジネスが登場し、法規制や監督制度が整備されているのか、全体像を俯瞰する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染予防による渡航制限が解除された後も、政変や資料収集先の入館制限などにより当初の予定を大幅に修正せざるを得ない状況に陥った。また、国際会議も延期やウェブに切り替わることが多く、渡航する機会もコロナ禍前と比較して大幅に減った。 昨年度は現地調査を予定していたが、コロナの影響で入国制限やコロナ感染予防政策の影響で、資料収集を行う予定であった研究機関が閉鎖された。また、コロナを受けて、調査対象しているイスラーム世界の「価値観」の変容が生じ、マレーシアでは11月に政権交代もあり、政治機構に関する調査が難しくなった。
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