研究実績の概要 |
本年度は、コロナ感染拡大の状況に伴い、予定されていたフィールドワーク実施計画を中断施せざるを得なかった。そのため、年間の調査計画を大幅に変更した。今年度は、これまでの調査で取得していたデータの翻訳作業、オンラインを通じたインタビュー調査、文献調査の3点に重点を置き、研究をすすめた。 分析した内容は、2007年から2008年、及び、2011年~2012年、2017年, 2019年に実施した口頭伝承の採集データのうちから、詠唱の歌詞300種の翻訳・パラオ語正表記(ハワイ大学出版のパラオ語英語辞典の記述法に依拠して、スペルを正書)をすすめた。さらに、歌詞中の古典パラオ語を抽出し、リスト化した。現存するパラオ語時点には記載のないものが多く、現在では日常的な使用頻度も低いため、長期間に渡る聞き取り調査を要したが、オンラインやメール等を使用して、古典パラオ語の読解作業をすすめた。また、それらのアーカイブ化に向けて、作業を行うためのプラットフォームの一元化も図った。 上記の作業と並行して、国際学会への参加(ASAO: Associacion for Social Anthropology in Oceania , 2021年1月 オンライン参加, 口頭発表)、国内研究会(日本オセアニア学会関東例会, 2021年2月)を行い、パラオの儀礼的ナラティブをめぐる分析や、パラオの神話世界にみる空間概念などに関する口頭発表を行った。また、同上発表内容に関する2本の論文の執筆を進めている。 当該研究課題の地域社会への知的還元の一貫として、公開オンラインセミナー「フィールドワーかーが語る人々の「物語」」を6回開催した(月1回/ 2020年9月~2021年3月)。セミナーは、NGO法人メコン・ウォッチ、国内外の研究者らと共同しておこなった。東南アジアやオセアニア地域の伝承や神話などを研究者が紹介し、20~30名ほどの参加者らと、1時間程度の意見交換などを行った。
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