研究課題/領域番号 |
20K20064
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
藤倉 哲郎 愛知県立大学, 外国語学部, 准教授 (70722825)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ベトナム / 農村 / 紅河デルタ / 人口動態 / 人口再生産 / 婚姻 / 教育と就労 / 地方経済 |
研究実績の概要 |
北部ベトナム・紅河デルタ農村における一村落悉皆調査データベースを用いた人口動態分析を引き続き進めた。前年度までの基礎分析の結果のうち、「1995年時点の年少人口のその後の村外流出が顕著で、現在の青壮年層の男女差に大きなアンバランスを生じさせている」という点に着目して、当該データベースをさらに高度利用することによって、調査村落における過去20年間について、人口再生産、婚姻圏(調査村落出身者の婚姻関係の地理的範囲)、青壮年層の学歴と就業の3点の状況の変化を、調査村落からの転出入状況と重ね合わせて検討した。 人口再生産状況は、調査初年の1995年時点ですでに少子化は顕著となっており、若い世代ほど、一組の夫婦の子の平均的な人数は2人というのが典型となっている。こうした状況のなかで、男女の婚姻範囲には大きな変化があり、集落を超えてもほぼ行政村内で成立していた婚姻から、調査集落の男性と、村外の周辺地域出身の女性との婚姻へと大きく変化している。婚姻圏の広がりは、日本の道府県レベルの行政単位(省)の範囲にとどまっており、変化の背景としては、地域経済の発展による若年層男女の非農業就労現場やその社交の場での出会いの機会の広がりがうかがわれた。 教育については、調査村落の若年層のあいだでは、高校進学は当たり前になってきている。さらに高等教育(大学、短大、専門学校)への進学者も増加しているが、大都市部の大学への進学と、そのまま大都市部での就労というパターンが高学歴の転出者に多い。他方で省都や周辺地域の大学・短大卒者が、地域で就労している例が多く見られ、地域の雇用創出のみならず、地方教育機関の役割がうかがえる。調査集落からほど近い農村部で就労・婚姻している若者も多く、基礎的人口分析で確かめられた若年層の村外流出という状況は、必ずしも大都市部など遠距離の転出が支配的とは言えないことが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度も引き続き、新型コロナウィルス感染症の流行により、ベトナム現地への渡航が困難であり、資料の取集、現地調査の準備がほとんどできなかったため。ただし、過去に蓄積されたデータにもとづく長期動向分析を一定程度進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
依然として日本国内・現地の両方において新型コロナウィルス感染症の波状的な流行がみられるものの、渡航制限の緩和が進みつつある。しかしながら、調査村落の住民との長期的な信頼関係を守る観点から、感染拡大リスクのある外国人が、現地村落調査に入って現地住民に聞き取り調査を実施できる段階にはまだない。公刊されている統計集の利用や過去の調査結果再検討するデータ分析に引き続き注力しながら、現地渡航による関係機関での資料収集やヒアリングなどを、いわゆるソーシャルディスタンスを取りながら実施できる調査を、年度後半にかけて計画する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の流行により、現地調査に関係する予算の執行ができなかったため。今後の現地調査再開の可能性を考慮しつつも、データ分析や成果発表に必要な機器・ソフトウェアの購入、データ分析作業への謝金、関連する研究書等の購入にあてるなど、研究方策の調整にともなう工夫をおこないながら使用する。
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