研究課題/領域番号 |
20K20065
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研究機関 | 北海学園大学 |
研究代表者 |
牛久 晴香 北海学園大学, 経済学部, 講師 (10759377)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ガーナ / 新たな技術の創出 / 外来技術 / ローカル化 / 技術の普及 / アフリカ的発展 / 地場産業 / ボルガバスケット |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ガーナのボルガバスケット産業を事例として、かご編み技術の創出と普及を進める人びとの実践を実証的に解明することである。 令和2年度は(1)新しいかご編み技術の創出に大きな影響を与えた原料の置き換え過程、(2)技術の普及に関わるバスケット産地の社会経済的・文化的特徴、に関して、すでに手元にあったデータをもとに文献調査を実施した。 (1)について、ボルガバスケット産業において新しいかご編み技術の創出が盛んになったのは1990年代以降であること、新技術の創出を促す契機となったのは1980年代後半に生じたバスケットにつかう原料植物の置き換えであったことが明らかになった。 (2)について、新たに技術が創出されてもすべてのかご編み村に普及するわけではないこと、産地の南部と北部で普及するかご編み技術に違いがあることが明らかになった。地域によって普及する技術に違いが生じる要因を検討したところ、以下の2点が明らかになった。①ボルガバスケットの技術的な源流は1950年代まで編まれていた地酒の濾し器に求められるが、産地の南部と北部では濾し器の編み方が微妙に異なっており、それが現在のかご編み技術にも影響を与えていること。②産地の南北の住民は同じ民族であるという意識を共有しているがクランが異なっており、技術普及にかかわる人びとの行動範囲に影響していると考えられること。 文献調査は想定以上の成果をあげることができたものの、COVID-19の世界的流行によって、当初予定していたガーナでの現地調査は実現できなかった。日本およびガーナの状況を鑑みれば令和3年度も現地調査の実施が困難であることが予想される。そのため、ガーナへの渡航がかなわない場合には、現地の調査協力者を介した聞き取り調査の実施を検討するとともに、日本においてボルガバスケットのかご編み技術の構造学的分析を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度は、日本における文献研究とガーナにおける現地調査を予定していた。 日本における文献研究については、すでに手元にあったデータをもとに文献調査をすすめ、(1)新しいかご編み技術の創出に大きな影響を与えた原料の置き換え過程に関する研究、(2)技術の普及に関わるバスケット産地の社会経済的・文化的特徴に関する研究を実施した。 文献調査は想定以上の成果をあげることができたものの、COVID-19の世界的流行によって、当初予定していたガーナでの現地調査は実現できなかった。現地への渡航が絶望的になった時点で、現地の人びととオンラインでやり取りができるよう情報環境を整えたが、現地の通信状況が著しく悪く、想定していたようなコミュニケーションが取れなかった。「かご編み技術の創出と普及を進める人びとの実践を実証的に解明すること」という本研究の目的を鑑みれば、研究の進捗はやや遅れていると言わざるをえない。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は令和2年度に実施予定であった新しいかご編み技術の創出プロセスに関するガーナでの現地調査を実施する予定である。しかし、日本およびガーナのCOVID-19の感染拡大状況を鑑みれば、令和3年度も現地調査の実施は困難であることが予想される。ガーナの通信状況の改善も望めない。そのため、ガーナへの渡航がかなわない場合には、現地の調査協力者を介した聞き取り調査の実施を試みるとともに、日本においてボルガバスケットのかご編み技術の構造学的分析をおこなうこととする。 具体的には、現地の調査協力者に現在ボルガタンガで編まれている形状を網羅的に撮影し、その名称をリスト化するよう依頼する。可能であれば、その形状の開発に関わった主体や開発時期、現在の普及範囲等の基礎的な情報を収集してもらう。これにより、渡航が可能になったときに即座により詳細な調査に入れるような状態をつくることをめざす。 日本においては、北海道や東北地方のかご職人に調査協力を依頼する。ボルガバスケットにつかわれているかご編み技術の多くは、日本のかごづくりにも使用されているものである。よって、すでに開発経緯や技術的な改変過程が一定程度明らかになっているボルガバスケットのかご編み技術について、なぜこのような改変経緯をたどったのか構造学的な見解や職人目線での評価を聞く。これにより、現地の人びとがおこなってきたローカルな実践を言語化できるようにすることをめざす。インタビューの実施にあたっては、COVID-19の感染拡大状況によって対面とオンラインの双方を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の世界的流行により、当初予定していたガーナでの現地調査が実施できず、旅費を執行することができなかった。次年度は現地の調査協力者への謝金と日本での調査出張、文献購入に助成金を使用する予定である。
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