研究課題/領域番号 |
20K20065
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研究機関 | 北海学園大学 |
研究代表者 |
牛久 晴香 北海学園大学, 経済学部, 准教授 (10759377)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | イノベーションの普及 / コミュニケーション経路 / ミドルマン / イノベーションの再発明 / 輸出指向型地場産業 / かご / ガーナ |
研究実績の概要 |
本年度は、創出された技術はどのようにして普及していくのかを明らかにすることを目的として、ガーナのボルガバスケット産地において現地調査を実施した。調査結果の概要を以下にまとめる。 ①普及の初期段階では、ミドルマンとマスターウィーバーが大きな役割を果たしていた。とくにミドルマンは、単に外国企業が求める製品を集めるだけでなく、編み手の説得、編み手同士の引き合わせおよび「訓練」の機会の提供、技術の「再発明」によって、新技術を普及させるための働きかけを積極的に行っている。 ②より多数の編み手への普及にあたっては、ミドルマンの手を離れたところで行われる、編み手同士の交流が不可欠であった。新技術を習得する動機は人によりさまざまだが、知識獲得の経路(あるいはその語り方)には性別による一定のパターンがみられた。主に女性は「地縁にもとづく教育/学習の成果」と語るのに対し、男性は「自主的な試行の成果」であることを強調する傾向があった。とくに男性による「自主的な試行」の結果、当初の新技術が「再発明」され、それが再びミドルマンによる普及の対象となる場合もある。 ③産業史を俯瞰すると、普及する新技術は産地内の小地区によって大きく異なっており、そのイノベーションが起こった当時の産地の「周縁」で普及する傾向があった。一部の新技術が①、②の経路で広まり、「周縁」地区が「新技術の中心」へと変わっていく結果、各地区に独自の技術的特徴がみられる「多中心」の産地が形成されていた。
本調査により、アフリカ農村と国際市場の接合過程におけるミドルマン(商人)の役割や、生産者の間にイノベーションが普及していく経路を、技術の側面から実証的に明らかにすることができた。また本研究結果は、アフリカ農村で外発的かつ意図的に技術を広めることに関心がある開発実務家やフェアトレードに関わる人たちに実践上の示唆を与えられると期待している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では(1)新しい技術はどのようにして創出されていくのか、(2)創出された技術はどのようにして普及していくのか、(3)技術の創出・普及のあり方に影響を与える社会経済的文脈、という3つの調査項目を立てた。コロナ禍で2年間渡航できなかったものの、(1)と(2)の調査はおおよそ終了しており、本研究課題の進捗はおおむね順調であるといえる。最終年度は(3)に着手し、ボルガタンガ地方の社会や経済の特徴が技術の創出・普及機構にどのように反映されているのか(あるいは反映されていないのか)を明らかにしたい。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は2024年度に完了予定である。新型コロナウイルスによる渡航制限が世界的に撤廃されたため、2024年度は8月~9月に現地調査をおこない、上述の調査項目の解明に尽力する予定である。新型感染症の流行などにより渡航ができない場合には、本事例の相対化のためにイノベーションの創出・普及に関する文献渉猟をおこない、アフリカ農村独自の技術の革新・普及モデルの提示が可能か検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究内容の精緻化のため。次年度の8~9月に現地調査を行い、本研究課題を完了する。
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