研究課題/領域番号 |
20K20072
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
油井 美春 関西学院大学, 国際学部, 准教授 (50634440)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | インド / 憎悪犯罪 / オンライン・ヘイトクライム / コミュニティ・ポリシング活動 |
研究実績の概要 |
本研究は、インド社会においてスマートフォンの急速な普及に伴う通信アプリを介した虚偽の情報の拡散とオンライン上の憎悪犯罪と暴行事件の頻発という現在 進行形の問題に取り組んでいる。 3年目の当初の計画は、インドのマハーラーシュトラ州での現地調査、調査成果を単著書として公表し、かつ総括的な調査として、コミュニティ・ポリシング活動への聞き取り調査と資料収集を行うこと、ケーララ州で自治体、教育関係者、州警察への聞き取り調査とネットリテラシー教育が行われている学校現場での参与観察を行い、合わせてグジャラート州に拠点を置く民間団体への調査でファクトチェックによる予防効果について検証することを予定していた。 しかし、前年度に引き続き、国内外での新型コロナウィルスの流行拡大による渡航制限のため、現地調査やオフラインによる学会報告の実施は難しい状況であった。 そこで、2021年度の研究成果をさらに発展させた形で、アジア経済研究所図書館およびオンライン上で、現地で刊行された報告書や新聞・雑誌記事を収集し、2020年3月から5月にかけて、インドで断行されて全土封鎖期間中のインド警察とコミュニティ・ポリシング活動についての分析を行った。タミル・ナドゥ州では、コミュニティ・ポリシング活動に従事してきたメンバーが一般住民の拷問に関与していたことが明らかとなって、1990年代から持続してきた活動が州政府によって解散させられるなど、この活動が持つ危うさが浮き彫りになった。この研究成果は、全土封鎖期間中のインド警察による反ムスリム的な言動や拘留死について検討した和文論文「インドにおけるコロナ禍の全土封鎖と警察活動 」を執筆し、『国際学研究』第12巻第1号に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究はインドでの横断的な現地調査と国内外での成果公表を行い、学会報告を通じて、現地調査で得られた知見を再検討し、また変容する憎悪犯罪とその対策についての学際的研究の意義を発信することを目的としている。当初はマハーラーシュトラ州、ケーララ州、グジャラート州に滞在しながら、自治体、教育関係者、州警察への聞き取り調査とネットリテラシー教育が行われている学校現場への参与観察を行う予定であった。本研究においては現地に赴いての対面での聞き取りと参与観察が有効な手法であるが、国内外での新型コロナウィルスの流行拡大に伴って、2021年度と同様に現地調査を行うことができなかった。そのため、本研究課題の進捗状況はやや遅れているとの評価を行う。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は、憎悪犯罪の形態や争点の変容を把握し、新たな展開とその予防について、ケーララ州、グジャラート州、マハーラーシュトラ州での聞き取り調 査と参与観察を行い、実践に対する評価や応用可能性を考察することである。 インドではコロナ禍という状況において、オンライン上の憎悪犯罪は引き続き継続している。2023年度には、インドに渡航してオンラインによる現地研究者への聞き取りから、本研究の対象事例である民間団体によるファクトチェック組織の活動拠点がグジャラート州から西ベンガル州に移ったことが判明した。そこで、今後はケーララ州、西ベンガル州、マハーラーシュトラ州での現地調査の実施を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの流行拡大によって、国外への渡航が難しい状況下で、現地調査実施および国際会議出席のために計上していた旅費が使用できなかったため。2023年度には、渡航制限も緩和しつつあるため、インドの現地研究協力者への聞き取りと参与観察を行う予定で、現在調整中である。合わせて、2023年度には引き続きアジア経済研究所付属図書館において、資料収集と解析を行うための旅費支出も予定している。
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