研究課題/領域番号 |
20K20085
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研究機関 | 九州産業大学 |
研究代表者 |
菅沼 明正 九州産業大学, 地域共創学部, 講師 (00868672)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 日本国有鉄道 / ツーリズム / 団体旅行 / 臨時列車 / 資料発掘 |
研究実績の概要 |
【本年度の課題】本研究は、近代日本のツーリズムとくに宿泊旅行の量的拡大の過程を、歴史社会学の手法を通じて、実証的に明らかにするものである。2020年度はコロナ禍のため研究活動に大幅な制限があり調査ができなかった。2021年度は前年度の反省を踏まえ、県外移動の制約下でも可能なJR九州の保有資料調査を進めた。 【調査内容】本年度の調査内容は以下であり、①旅行会設置および団体旅行輸送に関する記載資料の特定、②該当資料の所在の把握、③閲覧許可の取得という形で進めた。具体的には、JR九州元駅長の同僚の先生に協力していただき、関係者を紹介していただく形で調査を進めた。 【本年度の成果】①団体旅行の輸送記録は、臨時列車の運行予定表を記載した『局報』から特定できることが判明した。戦後期の『局報』には、輸送団体と臨時列車の筋、収入の記載があり、この記録を時系列に把握することで、団体旅行の普及の実態が実証的に把握できることを確認した。②国鉄期『局報』は「永久保存」資料であり、処分せずに保管されている可能性が高いことが判明した。③JR九州が保管する国鉄門司鉄道局の『局報』(大正8年間から昭和30年)の閲覧許可を取得し、1年間貸していただくこととなった。 【本年度の研究意義】国鉄期の文書は未刊行のものが多く、管内業務を記載した『局報』が体系的に公開されたことはなかった。この資料群には、臨時列車の輸送計画が記載されているため、九州地方を事例に近代以降のツーリズム、とりわけ団体旅行の普及実態が実証的に把握できるだろう。ただし同資料の資料的価値は本研究の目的を凌駕している。戦間期・戦時期・敗戦後の管内業務の記載があり、国鉄が果たした役割を、経済・軍事等の側面からも極めて詳細に検証可能である。したがって、鉄道が関連する学問領域が大きく発展する可能性がある資料を発掘したことが、本年度の最大の成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、鉄道会社側の団体輸送記録や旅行会設置に関する断片的な記録を入手し、宗教団体や地域社会側の資料から補完することで、近代以降の団体旅行の実態解明を目指そうとしていた。 だが、研究実績概要に記載したように、国鉄門司鉄道局の資料群を発掘したことで、臨時列車の運行(予定)記録を時系列に検証することで、近代以降の団体旅行の実態が当初の計画よりも詳細に明らかになることが確実となった。 以上のことから、当初の想定以上の成果を上げているため、本研究は計画以上に進展していると評価できると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、当初の計画を変更し、発掘した資料群を研究利用できるようにすべく、すべて撮影することである。 発掘資料は、国鉄門司鉄道局の業務日報で、大正8年から昭和30年まで(抜けなし)を、JR九州より1年間お借りした。 この資料群は非常に膨大で300冊以上あり、1冊あたり1000頁を超える。資料の分量からも返却後の再閲覧は難しいため、返却期日の本年度末までにすべて撮影することが最優先課題だと考えている。 研究計画ならびに予算使用執行計画に大幅な変更が生じるが、同資料群の学術的な価値を考えれば、適切な判断であると思われる。撮影グループを組織し、本年度中にすべての資料をデジタル撮影することが本年度の課題である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で、計画時のように旅費が使えなかった。ただし、2021年度の実績として新資料を発掘し、返却までにデジタル撮影を終える必要がある。300冊以上の資料を撮影するためには、多くの人件費を必要とするため、2022年度は撮影機材の購入と人件費に予算を充てたい。
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