研究期間全体を通じて、コロナ禍において全てが計画通りには進まなかったが、JR九州社の関係者への聞き取りにより団体旅客輸送が記載された関連資料を特定し、交渉の結果、未公開資料である門司鉄道局『局報』の原本の体系的な開示(大正期から戦後期)に成功した。直近2年間は、資料のデジタル・アーカイブ化を進めてきた。歴史的に貴重な資料群の貸出を受けたが、資料の劣化と破損が著しかった。そのため、研究活用を前提としたデジタル・アーカイブ化を進め、国立国会図書館のデジタルライブラリーと比べても遜色ない質で大正期から昭和30年までの『局報』約300冊のデジタル撮影を行った。最終年度の2月上旬に、撮影・画像チェック・再撮影の工程が完了した。 資料を活用した研究については着手途上である。局報の記載内容が多岐にわたり個人で研究するには限界があることから、幾人かの研究者と自主的な共同研究グループをつくり、多角的な研究を進めつつある(その一部は2023年11月の鉄道史学会大会にて共通論題をを組み報告)。ただし、本科研の最大の目的だった「ツーリズムの担い手を実証的な解明」はできていない。『局報』には臨時列車の運行記録があり、どのような団体が、いつ、どこへ移動したかが追跡できるため、今後研究を進めていく予定である。 当初の研究計画とは大幅な変更があったが、これまで歴史研究者がアクセスできなかった資料群を公開してもらい、将来的な研究利用を可能とするデジタル化を進めた点については、小さくない研究実績であると考えている。資料の研究活用ができる状態をつくりつつあるので、これからは研究成果の公表に力を入れたい。
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