研究課題/領域番号 |
20K20087
|
研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
西川 亮 立教大学, 観光学部, 助教 (70824829)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 温泉地 / 廃業 / 観光 |
研究実績の概要 |
我が国の温泉地には、観光需要の低迷により廃業した宿泊施設が廃墟化して残存している。筆者が2018年に実施した調査によると、全国で8割の温泉地に廃業旅館が存在し、景観や地域イメージ等に悪影響を与えている。温泉地の空間的魅力の向上や活性化を図るためには、民間企業による旅館再生が望めないようなこれらの宿泊施設を行政や観光関連団体によって取壊し、土地を有効活用するなどの方策が求められると考えられる。 そこで、2020年度は、以下の2つの研究を行った。 (1)石川県加賀市における廃業旅館の跡地更新プロセスの解明 廃業宿泊施設の取壊しと跡地の再利用が実現している石川県加賀市を対象とし、そのプロセスを明らかにした。具体的には、どのような経緯、主体、方法によって、廃業宿泊施設の取壊しと跡地再利用に至ったのか、跡地の利用法が決定されたのかを明らかにした。山代温泉、山中温泉、片山津温泉における廃業施設の更新の35事例を詳細に分析した結果、加賀市では行政と民間事業者それぞれが廃業施設の更新に取り組んできたが、その目的や対象とする建物の立地や特性は異なることが明らかになった。これを踏まえて、廃業施設の更新に関する計画論の試案を提示した。研究成果については、日本建築学会計画系論文集(査読あり)に掲載された。 (2)全国の温泉地における廃業旅館の実態解明 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う旅行需要の低迷から、旅館の廃業数も増加傾向にある。そこで、帝国データバンク保有の施設廃業データを用いて、全国的な廃業宿泊施設の実態把握に努めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は、新型コロナウイルス感染症の影響で遠方への出張は十分に実施できなかったものの、インターネット上で取得できる各種データ等を用いて、石川県加賀市における実態把握と研究成果の公表に至ったという点で、おおむね順調な進展であると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
2020年度後半に着手開始した、全国の温泉地における廃業旅館の実態について、引き続き分析を継続する予定である。その上で、2021年度は鬼怒川・川治温泉や草津温泉、水上温泉を対象として、市町村議事録の収集等に着手する。新型コロナウイルス感染症の拡大により出張が困難な可能性もあるが、その場合は、国会図書館での新聞記事検索等、代替手段による研究を進めていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当該助成金が生じた状況: 新型コロナウイルス感染症拡大により、現地への出張がかなわず、旅費を残したため。 使用計画: 帝国データバンクの保有する廃業企業情報データベースの購入、図書購入、旅費に充当する予定である。
|