研究課題/領域番号 |
20K20088
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研究機関 | 多摩大学 |
研究代表者 |
李 崗 多摩大学, グローバルスタディーズ学部, 専任講師 (60832657)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | VFR旅行 / 知人・親族訪問 / インバウンド観光 / 訪日中国人 / ホストとゲスト / 関係 / 観光人類学 |
研究実績の概要 |
2021年度は、新型コロナウイルスの世界的流行が続き、世界各国は感染拡大防止の一環として国境を超えた移動を制限している。パンデミックのなか、親友・親戚を訪問するVFR旅行の実行はきわめて困難となったが、ツーリズムの重要性や災害復興におけるVFR旅行の可能性について考える契機ともなった。本研究は、国内での対面調査は国内移動の制限やインフォーマントへの健康配慮などの理由で予定通り実施できなったが、オンラインインタビューやSNSを通した聞き取り調査を模索するとともに、日中両国の感染症対策がツーリズム、特にVFR旅行にどのような影響を与えるか、新型コロナウイルスの収束を見据えて両国においてどのような観光振興策が実施されているか、情報収集を進めることとした。具体的には以下のように調査研究を実施した。 ①中国における新型コロナ感染症対策の推移と国境管理:局地的な感染が続いている中国ではどのような感染症対策が実施され、ツーリズムにどのように影響するかについて情報収集を行なった。 ②VFRと福祉、VFR研究の倫理問題をテーマに文献収集・研究を行なった。新型コロナウイルスの流行のなか、観光倫理や福祉の問題が盛んに議論されている。本研究の研究関心において、VFR旅行がホストとゲストの両方にもたらす影響、友人・親族関係に介入する調査者の倫理が非常に重要なため、関連文献の研究を進めた。 ③VFR旅行の経験者への聞き取りと参与観察:前年度に続き、知人や親戚をホストした経験をもつ日本在住の中国人を対象に聞き取り調査を実施した。コロナ禍のなかではあったが、親族の訪問を受けたインフォーマントもいたので、許可を得て対面での観察・聞き取りを行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの流行で国境封鎖が続き、中国からの出国および日本への入国はコロナ以前に比べ困難となったため、訪日中国人VFR旅行者を対象とした現地調査が予定通り実施できなかった。また、コロナをめぐる授業対応や大学業務の負担が増加し、園内感染で保育園の休園がしょっちゅう発生したのに加え親族の日本への入国不可で、夫婦二人での育児が続いている。以上の理由で研究時間が削られており、進捗は予定より「やや遅れている」。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は以下のように調査研究を進める予定である。新型コロナウイルスの感染状況や国境政策の変化に応じて柔軟に展開させる。 ①日中両国の感染対応策の変化や観光の展開について引き続き情報収集を進める ②Larkin, B. (2013)のインフラストラクチャー論や移民インフラストラクチャーをめぐる諸議論を整理し、人の移動に関わるインフラという視点から見るVFR旅行について、文献調査・研究を行う。 ③VFR旅行の受け入れの経験者に対して、対面・オンラインを含む聞き取り調査を継続し、コロナ禍で友人・親族による訪問の中断はホストとゲストの両方にどのような影響を与えるか、VFR旅行の持つ意味や災害復興におけるVFR旅行の可能性という視点から文献調査を実施し、移動が可能であればVFR旅行者を対象に現地調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、新型コロナウイルス感染状況が深刻化し入国規制が厳しくなっている状況のなかで、参加予定の研究集会がオンライン開催に変更されたか開催がキャンセルされ、対面での聞き取り調査の実施も難しくなっていた。また、聞き取り調査に協力してくれたインフォーマントの好意で、本研究費からの人件費や謝礼の支出は発行しなかった。そのため、予算計画では2020年度と2021年度に使用する予定の旅費と人件費は、2022年度に繰り越した。2022年度には、新型コロナウイルスの感染状況を鑑みて、研究対象を拡大させながら聞き取り調査を引き続き実施するとともに、移動が可能であればVFR旅行者を対象とした聞き取りや参与観察も行う予定である。対面での研究集会や学会に参加し、口頭発表を行い論文投稿を進める。また福祉、倫理、災害復興といった研究視点の追加に伴い、必要な書籍や資料を追加購入し、渡航制限が長続きしているため中国からの資料の取り寄せも検討する。
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備考 |
日本観光研究学会「新型コロナ・特別プロジェクト」国際チームのメンバーとしての共同執筆『新型コロナ・特別プロジェクト報告書』
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