研究課題/領域番号 |
20K20090
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
酒匂 由紀子 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 研究員 (40822771)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 京都 / おもてなし / 観光客 / 酒 / 酒肴 / 中世 / 来訪者 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、「おもてなし」を歴史史料に即して意味を捉え直し、観光学やメディア、および観光地が有する概念の解釈を再検討することと、「おもてなし」行為の経済的価値の提議を目的とするものである。つまるところ、日本中世後期の古記録を中心とした史料の分析から、日本の「おもてなし」の概念に対する解釈を実証的に解明することである。具体的には、昔の日本が「おもてなし」をどのように解釈し、実践していたのかということを歴史史料と当時の社会構造に即して日本文化発祥の地とされる京都を中心に検討する。その結果を以て、かかる研究や議論、そして観光地へ「おもてなし」の概念に対する解釈の見直しを提言するための土台を築くことを目的とする。 本研究は、「おもてなし」が発祥したとされる中世後期において、この行為が完全なる無償奉仕であったといえるのか、ということにまで踏み込んで検討するべく、以下の通りに進める予定である。 1、室町時代~戦国時代の日記から接遇に関する記事を収集する。この際、京都のなかで行われた接遇と、京都外の地域で行われた接遇に分類しつつ、その接遇の内容の比較検討を行う。 2、1にて収集した記事に登場する人物の身分を確定する作業を行う。具体的には、日記と共に所蔵されている古文書や、京都近郊地域に残る古文書を使用して身分や所属を割り出す。 3、1・2にて収集したデータと、日記における前後の記事や関連史料を突き合せて、接遇を行う側と受ける側の各々の行為の真意を探りつつ、「おもてなし」行為の経済的価値指標を抽出する。 以上の研究方法のうち2020年度は、主に刊本史料を用いて、1の作業に徹した。また、当該期の社会状況や通念を押さえておくべく、奈良歴史研究会にて「徳政と徳政令」と題した研究報告をさせていただき、たくさんのアドバイスを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は新型コロナウイルスの流行により、所属先の研究室が閉鎖となり、一時期はプリンターなどの大学設備も使用できなくなった。また、所属先の大学図書館が一時閉館、短時間利用などの規制がかかり、従来通りに史料や参考文献を探すことができなくなった。それだけでなく、これまで頼りにしていた京都大学図書館機構や佛教大学図書館など、他大学の図書館も利用できなくなってしまった。他方、網羅的に史料を閲覧すべく、出張先として予定していた東京大学史料編纂所や宮内庁書陵部なども利用停止となり、当初の調査計画は、大幅に変更を余儀なくされた。 よって調査方法は、刊本史料を中心に進めていく方向へ切り替えた。そのため、当初、出張費として計画していた予算は、ほとんど刊本史料や参考文献の購入に充当した。図書館にて借りる予定だった研究書や研究報告書なども購入せねばならなかったので、自費もかなり使用せざるをえなかった。 加えて、研究報告を行う予定であった学会大会が2つとも中止となってしまい、研究の途中成果に関して意見をいただく場がなくなってしまった。急遽、奈良歴史研究会にてオンラインを利用した研究報告をさせていただけることになり、本研究において事例として扱う室町時代の社会的通念の再検討を試みた「徳政と徳政令」を発表させていただき、多くのアドバイスをいただけた。 現在は、「もてなし」の事例について、室町時代の古記録などから収集しているところである。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度も新型コロナウイルスが流行中であり、研究環境は【現在までの進捗状況】にて述べた去年の状況と変わらないため、史料閲覧の出張調査も不可能であると思われる。他方、研究の公開については、現在のところ、学会や研究会はオンラインが主流になりつつあるが、必ずしも報告できる確証はない状況である。 そこで、引き続き刊本史料を中心とした調査にて、【研究実績の概要】に示した研究方法のうち1~3の研究を進めながらも、国立歴史民俗博物館が所有する公家の家に伝わる古記録の写真複写を新たに取り寄せて、情報を増やしつつ研究を進めていくこととする。 2020年度に学会発表する予定であった研究途中の成果は、口頭報告は行わず、研究を仕上げた上で論文化していく方針に切り替えることとした。他の研究者らから研究のアドバイスを頂ける機会を模索したい。
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