研究課題/領域番号 |
20K20094
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研究機関 | 同志社女子大学 |
研究代表者 |
張 イヨウ 同志社女子大学, 現代社会学部, 助教 (50827730)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | フェミニズム / 精神分析論 / 欲望 / ファンタジー / 理論構築 / ボーイズ・ラブ |
研究実績の概要 |
2020年度は主に文献調査と論文執筆を行った。 文献調査においては、BLに関する日本語の先行研究を「『男』『同士』の『関係性』をめぐる女性のファンタジー」を軸に総合的に検討した上で、BL研究をめぐる包括的な論点の構築を試みた。そこで、ファンタジーをめぐる議論を中心に、ラカンの精神分析論、及びそれをめぐるフェミニズムの批判を検討することで、「BLファンタジー」を構造化してみた。上記の議論をまとめた論文「腐女子の『ファンタジー・トラブル』:身体・欲望・妄想をめぐるBLファンタジーの存在論」を『ジェンダー研究』第24号(お茶の水女子大学・ジェンダー研究センター)に投稿し、掲載が決まった。これまでのBL研究において、腐女子に焦点を当てる当事者研究、またはBL作品を扱う表象分析など、いわゆる事例分析の研究が多く、中でもジェンダー視点の研究が豊富ではあるが、BLという文化とジェンダー構造の関連を巨視的な観点で捉える論点は欠けている。本論文はこの問題点を取り上げて理論構築を試みたことで、従来のBL研究とジェンダーに重要な貢献をもたらすと考える。 また、2020年8月末に予定していたEAJS International Conference 2020はコロナの影響で2021年に延期になった。本来発表予定のテーマ"Beyond the Screens of 'LGBT-Friendly' Japanese TV Dramas: Is there Hope or Utopia?"においては、近年話題になった男同士の恋愛ドラマをめぐる言説を取り上げて分析する予定である。上記の投稿論文の議論を踏まえて、ドラマに反映される「男」「同士」の「関係性」をめぐるファンタジーを中心に議論を深めていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響で、資料調査と対面で実施する調査が困難だった。特に2020年度前半では、日本全国の大学図書館はほぼ休館しており、海外の文献も国際運輸の問題に影響され、資料の入手すら困難だった。また、大学の教育もすべてオンラインで実施したため、その準備は予想以上の難しさだった。そのため、できる範囲内で文献を収集し、文献調査を中心に行うことが余儀なくされた。 また、学会もほぼ中止・延期になったため、研究成果を発表する場も、学会参加で情報を収集する機会も限られていた。 さらに、本研究と関連するインタビューやフィールド調査もコロナの影響で、ほぼ実施できなかった。緊急事態宣言の下での他県への移動が制限されたり、資料館が休業したりする事態が続いていた。また、同人誌即売会も中止となったため、フィールドワークを断念せざるを得なかった。 しかし、むしろこのような状況だからこそ、文献調査に専念でき、今後の研究の土台となる理論枠組みの構築に成果を出せたので、調査と分析の方向性もより明確になったと考える。コロナが収束に向かい、現地調査や対面インタビューがスムーズに行えるようになったら、調査とデータ分析の工程をより良いスピード感で進められるのではないかと考える。
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今後の研究の推進方策 |
コロナの感染状況にもよるが、今後の推進方策は以下の2つの方向を並行して進めたいと考える。 まずは、理論枠組の確認とデータ収集を並行して行う。理論枠組をある程度構築できたが、論点をさらに精緻化する必要がある。今後はファンタジーという概念を軸に、下記の2つの方向を中心に文献調査を進めていく。1つ目に、腐女子の欲望と主体性を論じるために、ファンタジーをめぐるフェミニズムと社会学の論点を検討する。2つ目に、ファンタジーを愉しむことが中心となるBLがポップカルチャーの一つの分野として定着しつつあるという現象を踏まえ、ファンタジーに関するポップカルチャー研究も検討する。上記の2つの分野の研究検討することで、ファンタジーをめぐる理論枠組を整える。 このように、理論枠組を整えながら、BL作品を網羅的に概観し、ファンタジーの表現の系譜を整理した上で、理論枠組と照らし合わせながら理論枠組を修正していく。 次に、コロナのパンデミックが一年以上経過した今日、アカデミックの活動のオンライン化も徐々に定着しっつある。この新しい学術のあり方を活かし、学会や研究会の日本国内外のオンライン学会や研究会に積極的に参加し、情報を収集・共有する。また、BLマンガ家や腐女子を対象とするインタビューの予備調査として、SNSを活用して調査対象を募集し、Zoomなどのオンラインツールを使用してインタビューを行いたいと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響のため、海外の国際学会が延期となり、研究費の大きな割合を占める旅費や学会参加費等を使う機会ができなかった。また、日本国内の移動制限もあったため、資料調査、インタビュー、フィールドワークができず、この部分に関する旅費、調査費用、謝金なども利用できなかった。また、春学期は大学の入構制限があり、学生アルバイトを雇用できなかったため、人件費の使用は秋学期の期間のみとなった。
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