研究課題/領域番号 |
20K20095
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研究機関 | 神田外語大学 |
研究代表者 |
高橋 麻奈 神田外語大学, グローバル・リベラルアーツ学部, 講師 (60828185)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ジェンダー / 小島嶼開発途上国 / ニウエ / 人権 / オセアニア / ダイバーシティー / 性暴力被害者支援 / 社会的弱者 |
研究実績の概要 |
2022年度も新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、研究活動の実施上多くの制限があった。しかし、ニウエへの入国制限が2022年秋以降に緩和されたため、2023年2月にニウエにてフィールド調査を実施することができた。世界的パンデミックの影響は想像以上に大きく、ニウエ関連の情報へのアクセスが困難を極めたため、2023年2月は「太平洋小島嶼開発途上国におけるコロナ禍以降の人権状況(基本的人権及びジェンダー)」に関する実態調査ということに焦点を定め、広くコロナ禍前後における社会や人々の変化と、人権状況の把握ということを目指し、人権活動家、法曹、政府関係者、女性支援団体関係者、研究者、国際機関関係者等をターゲットにして、インタビュー調査を実施した。現在は入手出来たデータを基に、論文作成に着手している。 その一方で、2022年秋以前は研究計画の実施に関しての目途が立たずにいた。そのため、一昨年度・昨年度より継続して「性暴力被害女性保護や、多様性に関する社会的課題、さらに関連する職業・ジェンダーに関する課題」について日本国内での状況を調査することを通じ、当該問題点への理解を深めることにも注力した。また、この課題に関連した日本国内で実施可能な研究活動を実施した。2022年度は、社会的弱者の権利と社会活動およびエンパワーメントのための政策について理解を深めるため、日本国内の障碍者の政策に着目し、障碍者の権利と共生社会の実現、さらにはそれを生かした地域振興を実施している自治体の取り組みおよび障碍者・健常者によって構成されるプロジェクトをテーマとして、実態調査を行い、論文を執筆した。この成果物は、2022年6月にJournal of Silence Studies in Educationより出版された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
一昨年度・昨年度に続き2022年度についても、新型コロナウィルスの影響による制限によって、予定していた研究活動を計画的に実施することは不可能であり、大幅な計画変更を余儀なくされた。しかし、研究対象地域であるニウエの入国制限緩和によって、2022年秋以降にフィールド調査が実施できたことにより、情報やデータが入手できたことは大きな一歩であった。現在は、この2023年2月に現地調査で実施したインタビュー内容やデータをまとめて分析し、論文執筆の準備をしている状況である。 他に、コロナ禍による制限があった期間においては、今年度も継続して「日本国内で実現できること」に集中して、計画を変更しつつ実施していった。具体的には、ニウエや太平洋島嶼国における状況を理解していく際に、その社会状況やターゲットに関する課題への考察をより深めることができるよう、本研究テーマに応用可能な近接課題についての日本国内での社会調査を一昨年度から実施している。その成果として、2022年度も海外のジャーナルで論文を発表できた。 このような点から、この2年間に比して大幅に研究としての進捗があった一方で、様々な制限による遅延が大きく発生しているという状況である。ようやく当初の予定通りの活動ができるようにはなったが、それ以前の影響が大きいことから、予定通りに成果物(論文等)を発表するまでには今のところ至っていない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進の方策としては、①2023年2月に実施したフィールド調査の際に入手したデータ(資料・インタビュー等の成果)の分析、②①の実績に関しての論文の執筆及び成果物の発表、③比較対象としての近隣国家の状況についての追加調査、の3点についての実施を検討している。 ①については、現在フィールド調査での成果を基に作業を進めており、引き続き得られたデータと社会状況について整理していく予定である。また、この成果は2023年度中にまとめ、論文として執筆を開始していく。 その作業と並行して、②として①の作業状況の中間発表が実施できるように準備する。その過程を経て、最終的に成果物としての論文を出版できるように計画的に行っていく。現在のターゲットとしては、Law and Development Associationまたは日本オセアニア学会などの地域研究またはディシプリンにて関連する場所での成果報告を検討している。 ③については、本研究の対象地域であるニウエの比較対象としてのクック諸島でのフィールド調査を予定している。現在、2023年7月に、クック諸島で開催される「5th Pacific Islands Universities Network Conference」にて発表者として参加することが既に決定している。その際に、クック諸島や太平洋島嶼国における研究者たちとの交流と情報交換・研究成果の発表とともに、クック諸島における人権状況の実態調査(インタビュー調査及び文献・情報収集)もあわせて行う予定である。ここで得られた情報等も併せて、最終成果物としての論文に生かしていけるように努めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの感染拡大の状況により、2020年度・2021年度・2022年度に実施できなかった小島嶼開発途上国におけるジェンダーに関する法整備状況・国際的地位に関する文献調査および実施調査を行うため、引き続き計画通りの予算が必要である。特に、フィールド調査を実施できたのが2023年2月であり、これが本プロジェクト開始以降初めてのものになったため、現在はデータ分析・成果物作成の途中の段階である。したがって、現在までに発生した様々な世界の情勢による制限によって遅延してきた計画に追いつくべく、引き続き研究を遂行していく必要がある。また、併せて現時点までに遅延していた、または実施できていなかった計画に関しても実施していく必要がある。これらの研究活動はリソースやデータの入手に加え、研究成果をあげていくうえで不可欠である。 より具体的には、①2023年2月のフィールド調査の分析及び成果物作成の継続、②追加のフィールド調査(ニウエ周辺国であるクック諸島)を予定している。フィールド調査に関して、周辺国でありニウエと同様の法的地位(ニュージーランドの自由連合国)にあるクック諸島をターゲットとして、人権状況について政府関係者・NGO関係者・研究者、援助従事者等に対してインタビューを行う予定である。
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