研究課題/領域番号 |
20K20101
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
鳥山 純子 立命館大学, 国際関係学部, 准教授 (10773864)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | エジプト / 「1月25日革命」 / 民族誌 / 欲望 / ジェンダー / セクシュアリティ |
研究実績の概要 |
2021年度は2020年度に引き続きCOVID-19によって現地調査ができなかったことを受け、主に2020年度に収集を始めた「1月25日革命」に関わる研究および一般書の収集と講読を引き続き行った他、「ろくでなし研究」実践のきっかけとなった博士論文の書籍化を通した「ろくでなし研究」の手法探求を行った。「ろくでなし研究」の手法探求としては主に、調査手法、収集データの分析、民族誌を「書く」ことに関わる手法の模索を行った。 対象となる「1月25日革命」以降のエジプト社会では、既存の社会秩序が大きな変遷を遂げ、また社会体制が大きく変化したことから、学問的にも大きな認識枠組みの変更がもとめられている。従来の枠組みが限定的にしか利用できなくなった今、人類学的手法を用いて近年のエジプト社会の理解を目指すのであれば、どのように現在の社会状況を包括的に理解できるのか、という枠組みの策定が不可欠であった。 こうした認識を踏まえ、2021年度の研究活動の主な成果としては、単著である民族誌の執筆と論文(書籍の一章)の執筆という形で発表した。そこで行ったのは、具体的には外在的指標に頼らない調査対象そのもののロジックに迫ったミクロな記述を行うことと、そうしたミクロな記述を社会・政治・経済的文脈に照らした解釈・分析を行うことである。成果発表は主に2022年3月に刊行されたためにまだ広くフィードバックを得るには至っていないが、今後は研究会発表、学会発表、合評会等を通じてさらなる精緻化に努める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍を受けて現地調査の進捗ははかばかしくないものの、エジプトにおける「1月25日革命」以降の閉塞的な社会をたくましく生きる「人の民族誌」という研究手法については一定の成果を挙げることができた。これによって、「人の民族誌」という概念のもとに「1月25日革命」以降のエジプトをどのように捉え、問題化し、また解釈していくのかという実践的分析の手法における準備が整ったと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、これまで収集した文献の分析を下敷きにしつつも、エジプトで実際に起こりつつある社会現象の分析を執筆・発表する予定である。未だコロナ禍によってエジプトでの現地調査が困難になることも考えられるものの、すでに11月には渡航の予定を組んでいる。 もし次年度も渡航が困難になった場合は、文化現象としてのミュージックビデオやインスタグラムに登場しているインフルエンサーに調査対象を変更し、「1月25日革命」以降のエジプトが経験してきた変化について分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により現地調査実施が不可能になったことにより、旅費の多くを書籍と資料の購入にあてた。2022年度は海外渡航規制が緩和されることが見込まれるため、現地調査を実施し、「次年度使用額」についてはその際の旅費にあてる予定である。
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