1990年代から発展した身体性の概念と、現在のデザイン教育の間には溝があり、身体性に関する科学的・美学的知見がデザイン教育分野で十分に活用されていない。本研究は、バウハウス初期に短期間のみ行われた実践的授業「感性調和論」に着想を得て、身体感覚の探索がデザイナーの感性開拓に対して如何なる有用性をもち得るかを明らかにすることを目的とした。当初はワークショップと省察的実践という二つの研究方法を通じて、これまでに蓄積された身体性に関する科学的・美学的知識とデザイン教育との結びつきを探究することを検討していたが、若手研究開始と同時に始まったパンデミックの影響を受け、研究者自身による制作と身体感覚の観察を中心としつつ、適宜インタビューなどにより他者の経験を参照するという形をとった。 特に三年目には3Dプリンタなどの製作機械を導入し、それまでに形成した人工物コンセプトを体現するようなプロトタイプを複数製作した。プロトタイプは、インタビューにおいてその可能性について検証された。 身体感覚の探究およびサービスデザインの両方の観点において専門性をもつ藤原綾子氏に適宜、アドバイスと知識提供を依頼した。藤原氏によるインプットは、身体感覚を元にデザイン設計論を構築しようとする本研究にとって高い親和性をもつことが判明した。 プロトタイプの検証結果やそのなかで発見された各種身体感覚に関する気づきを研究廃止時までの成果物とした。
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