本研究の目的は,共創デザインにおいて,当事者視点に立つことを可能にするユーザー体験のプロトタイピング手法を開発し,提案手法がコ・デザイナーによる 議論(アイデア創出や合意形成)及び成果物の質に及ぼす影響を解明することである. 2022年度は、(1)長期デザインプロジェクトにおけるチームワークにおいてどのようなタイミングで当事者視点に立つ活動(共感する)が実施されているのか、またタイミングによって成果物に影響があるのかを評価した。評価はプロジェクト期間中の定期的な質問紙調査と事後インタビュー、成果物の質の観点から実施した。(2)ユーザー体験価値を判断するためのプロトタイプの評価において、バーチャルリアリティを用いて実際の利用空間内の当事者の視点をコ・デザイナーに与える効果を実験的に検証した。実験では、実空間・実空間を投影したVR・非実空間の3つの条件において、プロトタイプの評価がどのように変化するかを質的に評価した。(3)ユーザーインタビューにおいて当事者の生活に埋め込まれたセンサーからのデータが、デザイナーの当事者視点獲得にどのような効果があるかを検証した。 研究期間全体を通して、デザイナーやユーザーによる当事者視点獲得を支援する方法として、(1)IoTデバイスを用いた日常データの活用、(2)当事者視点を得られるバーチャルリアリティの活用を提案した。また、長期デザインプロジェクトにおけるチームによるデザイン活動において、当事者視点獲得がどのタイミングで行われるかを可視化する質問紙を開発し、チーム活動を可視化し、当事者視点の獲得と成果物の関係を分析した。
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